エピカルモス(読み)えぴかるもす(英語表記)Epicharmos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エピカルモス」の意味・わかりやすい解説

エピカルモス
Epicharmos

[生]前550/前530
[没]前460/前440
ギリシアの喜劇作家。生地はシチリアシラクサ,または同島のメガラ・ヒュブライア,またはコス島。ドーリス系のシラクサ喜劇の創始者および代表的作家としてシチリアで活躍。作品は 50以上あったらしいが,35編の題名とわずかな断片だけが伝わる。そのうち 18編は神話伝説のもじりで,フリュアケス笑劇と同じように英雄や神々が滑稽化される。脱走兵オデュッセウス,魚屋ポセイドン,大食漢ヘラクレスなどである。またアッチカ古喜劇に現れるアゴン (討論) の形式に似た論争劇もある。さらに中喜劇を思わせるような日常生活を扱ったものもあり,新喜劇に登場するような幇間 (ほうかん) や大酒飲みなどの決り役もあった。彼の喜劇は合唱隊を用いず,宗教的役割もなく,アッチカ喜劇に比べれば道化芝居に近かったが,文学性は高く,アテネでも読まれ,アッチカ喜劇に与えた影響は大きい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エピカルモス」の意味・わかりやすい解説

エピカルモス
えぴかるもす
Epicharmos

生没年不詳。紀元前6世紀後半から前5世紀前半にかけて活躍したシチリアの喜劇詩人。生まれはシラクサ、またはコス島ともいわれる。ドーリス方言を用いて神話伝説のもじりや、後のギリシア古喜劇にみえる討論形式のやりとり、また日常茶飯事を素材とする滑稽譚(こっけいたん)を書き、ギリシア喜劇の先駆となった。わずかな断片と、『キクロペス』『略奪』『陸と海』など37編の表題が知られるのみであるが、そこでは大食漢のヘラクレス、狡猾(こうかつ)なオデュッセウス、また市井の庶民の飲んだくれや居候などが登場し活躍したらしい。その用語もギリシア古喜劇に劣らずカラフルで洗練されており、韻律も多彩である。ただ古喜劇と異なり、コロス(合唱隊)をもたず、内容もより自由であった。一方また彼は、古来、かなりの数の哲学および自然科学の著作の作者に擬せられ、ピタゴラス派の哲学者とも目されたが、これは誤伝であろう。

[丹下和彦]

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