L. Boltzmannがマクスウェル-ボルツマン分布を導く際に用いた仮説.N個の粒子からなる体系が外界から孤立していると,系全体のエネルギーEは保存される.6N次元の位相空間,すなわち,γ空間の点(q1,q2,…,q3N,p1,p2,…,p3N)は体系の一つの状態を与える.その状態点は力学の法則に従って時間とともにE = constの面上を移動する.その軌道が面の全領域を覆うかどうかはめんどうな問題で,面の一部には決してこないことがあるかもしれない.そこで,考えている体系に対して,仮定“体系の状態点の軌跡は時間の経過とともにγ空間におけるE = constの面上すべての点を通過する”をおく.これをエルゴード仮説という.この仮説が成立すれば,ある力学量Xの時間平均と位相空間平均とが等しくなること(エルゴードの定理)が証明される.しかし,周期運動のような場合には,エルゴード仮説が成立しないこともありうるので議論は紛糾した.現在に至るまで,エルゴード理論としていろいろな側面から多数の物理学者および数学者によって研究されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…統計力学の土台となる仮説にエルゴード仮説ergodic hypothesisがある。これは,熱平衡状態にある系においては,物理量の熱力学的観測値は,すべての力学的状態についての物理量の平均値に等しいというもので,そもそもL.ボルツマンによって提唱された仮定である。…
…ボルツマン自身もH関数を増加させる初期条件もあることを認めたが,そのような初期条件は例外的だとしたいので,H関数の減少する確率が高いという形でしか証明の道はないと考えた。気体分子運動論
[エルゴード仮説と統計集団]
熱平衡状態の統計力学の建設はすんなりとはいかなかったが,1868年にボルツマンが,分子の速度成分を確率変数とみるマクスウェルの速度分布の導出法は分子運動がニュートン力学に従うことと矛盾するとし,気体分子間のエネルギー分配問題を考え直したところから始まる。ボルツマンは,気体内の1個の分子に着目すると,そのエネルギーは他分子との衝突により増減するが,単位時間中に区間(A,A+dA)内のエネルギー値をとる状態に滞在する割合としてエネルギー分布則Φ(A)dAを定義する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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