偽足,擬足ともいう。アメーバが池の中の枯葉などの表面をはって歩くとき,体の前端部から細胞の一部分を突き出して当該の表面に接着しながら進む。この突き出した部分はあたかも足のように見えることから仮足と呼ばれる。仮足の形や数はアメーバの種によって異なり,仮足の先端が丸みを帯びている葉状仮足,細長く先端がとがっている糸状仮足,網の目のように仮足が融合している網状仮足などがある。また同じ原生動物の太陽虫の放射状に多数出ている有軸仮足は中心に微小管microtubuleの束を持っている。アメーバの仮足は前進運動だけでなく摂餌(せつじ)にも重要で餌を2本の仮足で抱え包み込んで体内に取り入れる。太陽虫では,仮足の伸縮で体の移動を行い,またゾウリムシなどの餌を取るときには触手のように餌を取り抑え,体内に入れる。この仮足は機能的にはアメーバのものとまったく同様であり,足とはいうものの手の働きも兼ねている。
執筆者:武田 文和
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…棘皮(きよくひ)動物の管足は水管系の突出物で放射状に5帯に配列しており,先端が吸盤状になっていて,他物に吸着し体を保持・移動する。アメーバ類の仮足は随時形成される細胞体の運動方向への突出にほかならない。【原田 英司】
【脊椎動物の足】
脊椎動物のうち魚類を除く両生類,爬虫類,鳥類,哺乳類は,前肢(ヒトでは上肢,鳥類の場合は翼)と後肢(ヒトでは下肢)からなる4本の足をもつので,四足類(または四足動物,四肢動物)と総称される。…
…内質には核,収縮胞,食胞,ミトコンドリアなどを含む。仮足(かそく)をだして運動するが,その際は体の後方の外質のゲルがゾル化して内質流となり,体の前方に向かって流動し,先端部のプラスマレンマが前方に膨らむ。ここで左右に分かれた内質流が膜のすぐ下でゲル化して外質になる。…
…アメーバ運動とは自由生活あるいは寄生しているアメーバにみられるような,細胞が形を変えながら動いて歩きまわる運動であり,われわれの体の中で一部の白血球(マクロファージなど)や癌細胞などもこの運動によって動く。細胞質の流動を伴い,仮足の腹面を歩く面上にしっかり接着させて進む。細胞膜の内側には外肉質ゲルがあって外形を保ち,その内部を内質ゾルが流動している。…
※「仮足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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