日本大百科全書(ニッポニカ) 「オウム病」の意味・わかりやすい解説
オウム病
おうむびょう
もともと鳥類の伝染病であるが、病原体をもつ飼い鳥(インコ、オウム、カナリア、ジュウシマツ、ブンチョウなどの輸入鳥)や野鳥のドバトなどとの接触によってヒトにも感染する。感染症予防・医療法(感染症法)では、4類感染症に分類される。
病原体はオウム病クラミジアChlamydia psittaciで、汚染された羽毛や分泌物、排泄物(はいせつぶつ)などの吸入や咬傷(こうしょう)によって感染するが、鳥の糞(ふん)が乾燥飛散したときに吸入する場合が多い。潜伏期は7~14日で、発病は急なこともあれば緩慢な場合もある。1~3週間にわたる高熱、食欲不振、頭痛、筋肉痛、咳(せき)、喀痰(かくたん)などが定型的症状であるが、なかには熱と咳が出て感冒程度の軽症ですむ場合も多い。診断はX線検査で肺門部から病変が広がる肺炎像が認められ、鳥類との接触歴があれば、ほぼ決められる。治療にはテトラサイクリン系の抗生物質が著効を示す。重症の場合は循環不全や脳神経症状、肝不全などを伴い死亡することもあるが、化学療法の導入以後の予後は良好で、致命率は1%以下になった。ヒトからヒトへの感染もあるので、有熱期間中は患者を他者から離し、衣類や器具の消毒、とくに痰や糞便の取扱いに注意する。また、愛玩(あいがん)鳥の管理をよくし、餌(えさ)の中に抗生物質を混入することも行われる。
[柳下徳雄]
オウム病クラミジア
クラミジア目クラミジア科クラミジア属に属するオウム病の病原体。現在はリケッチア群に含まれている。直径0.2~1.5マイクロメートル、球菌状で、ギムザ染色により染色される。細胞壁があり、RNAとDNAをともに有する。ヨードで染色されない封入体をつくり、サルファ剤に感受性がないのが特徴である。
[曽根田正己]