改訂新版 世界大百科事典 「オガサワラオオコウモリ」の意味・わかりやすい解説
オガサワラオオコウモリ
Bonin flying fox
Pteropus pselaphon
毛が長く,むく毛状で首輪がない灰黒色の翼手目オオコウモリ科の哺乳類。小笠原諸島の特産で,母島および硫黄列島の中硫黄島,南硫黄島に分布する。1860年(万延1)ごろは父島にも多数生息していたが,近年絶滅したらしい。体長20~25cm,前腕長12.5~14cm。吻(ふん)は短くて,太く,耳介は短く,先端が細く,ややとがる。後肢上面からつめの基部まで毛に覆われる。体毛は柔らかい長毛と短毛からなり,上下面とも灰黒色,光沢のある銀白色の毛を混生し,霜降り状。昼はふつう樹木のこずえに後足でぶら下がって過ごし,多くは夕方,ねぐらを離れるが,ときに昼間も飛翔(ひしよう)するのが見られる。甘く熟したバナナ,タコノキなどの果実を好み,リュウゼツランなどの花みつもなめる。飼育下ではリンゴ,バナナ,モモ,イチゴなどを好む。1969年に天然記念物に指定され,捕獲を禁止されているが,多数生息していた母島でも,近年個体数が激減している。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報