オクリ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オクリ」の意味・わかりやすい解説

オクリ

日本音楽,演劇の用語。「送り」の字をあてる。 (1) 謡曲では地拍子の用語で,七五調一句を八拍子 (やつびょうし) にはめるのを本地 (ほんじ) とするのに対して,下の句が5文字以上ある場合,全体を十拍子にあてはめるが,そのときの増加分二拍子を「オクリ地」という。 (2) 義太夫節では,旋律形態のまとまりをもつ部分から次の部分へのつなぎの役を果す部分をいう。特に1段を口・中・切と分けて演奏者が交代するとき,その最初にオクリの手が用いられる。そのほか,連続する演奏の途中でも,登場人物の交代など,なんらかの転換のあるところに用いられ,細かくは,オクリの種類にいろいろある。 (3) 小唄の楽器的間奏の名称。同一旋律の反復により作曲されている場合,その伴奏三味線の最初の章の後弾 (あとびき) の全部または一部が次章の前弾を兼ねているときに,その間奏をいう。 (4) 尺八では奏法用語で,同音の反復をいい,その特殊なものに「ルのオクリ」 (記号「ル」) ,「ナヤシオクリ」 (記号「へ」) がある。 (5) 地歌箏曲では,本手との合奏における地の技法用語で,「オクリ地」などと用いて,本手と同じ旋律を送って弾いていくことをいう。 (6) 俳優供人のこと。金剛ともいう。 (7) 木戸芸者のこと。

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