(読み)ヨウ

デジタル大辞泉 「謡」の意味・読み・例文・類語

よう【謡〔謠〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]ヨウ(エウ)(呉)(漢) [訓]うたい うたう うた
ヨウ
節をつけてうたう。また、流行歌。うた。「歌謡俗謡童謡民謡俚謡りよう
能楽のうたい。「謡曲
根も葉もないうわさ。デマ。「謡言
〈うたい〉「謡物地謡素謡すうたい

うたい〔うたひ〕【謡】

《動詞「うた(歌)う」の連用形から》詞章。また、これに節をつけて謡うこと。観世宝生金春こんぱる金剛喜多などの流儀がある。謡曲。

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精選版 日本国語大辞典 「謡」の意味・読み・例文・類語

うたいうたひ【謡】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「うたう(歌)」の連用形の名詞化 )
  2. うたうこと。また、うたいもの。
    1. [初出の実例]「例のごとく玉女共、うたひをうたひて来て」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)六)
  3. 能楽の詞章。または、これに節をつけてうたうこと。演能の時だけではなく、これだけでもうたうことがある。囃子(はやし)がつかないで、単独でうたうのを素謡(すうたい)、一曲全部をうたうのを番謡(ばんうたい)、一節(いっせつ)のみをうたうのを小謡(こうたい)という。謡曲。
    1. [初出の実例]「うたひの根本(こんぼん)を申さば翁(おきな)の神楽歌(かぐらうた)を申すべきか」(出典:申楽談儀(1430)序)
    2. 「謡(ウタヒ)を門々にて唄ひ」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)六)
  4. うたいものなどのうたい手。
    1. [初出の実例]「けんの弟子にて、早歌(さうが)うたひにて有りしが」(出典:申楽談儀(1430)音曲の心根)

謡の語誌

( 1 )の構成は節の部分と詞の部分とからなり、音楽としてはヨワ吟(ぎん)ツヨ吟との二通りのうたい方に分けられる。
( 2 )作者は多く観阿彌、世阿彌、金春禅竹(こんぱるぜんちく)などで、その文章は古典の美文をつづり合わせたものが多い。
( 3 )流儀には観世(かんぜ)、宝生(ほうしょう)、金剛(こんごう)金春(こんぱる)、喜多(きた)などがある。三〇〇〇番ほど作られたが、現行曲は約二三〇あまり。

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普及版 字通 「謡」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 16画

(旧字)謠
人名用漢字 17画

[字音] ヨウ(エウ)
[字訓] うた・うたう・そしる・うわさ

[字形] 形声
旧字は謠に作り、(よう)声。もと(よう)に作る字で、〔説文〕三上に「は徒歌なり」とあり、謠字を収めない。〔詩、魏風、園有桃〕は、搾取に堪えかねて逃亡する隷農の詩で、その首章に「我歌ひ且つ謠ふ」の句がみえる。この謠は呪詛の意を含む語である。童謡の童は結髪を許されない徒隷、その労働歌は無為的な讖言(しんげん)として用いられた。〔左伝〕には童謡や、これと似た性質の「輿人(よじん)の誦」を多く録している。「輿人の誦」はいわゆる輿論(よろん)である。

[訓義]
1. うた、うたう、わざうた。
2. ひなうた、はやりうた。
3. そしる、うったえる。
4. うわさ、流言。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕謠 和佐宇太(わざうた)〔立〕謠 ウタフ・ワザウタ・ワザゴト 〔字鏡集〕謠 ウタフ・ウタ・ヒトリウタ・ハナツ・イタヅラウタ・ヲサム・ウヤマフ

[語系]
謠・jiは同声。みなの声義を承ける。は肉を供えて祈る意。みな呪祝・占(せんちゆう)に関する意を含む語である。

[熟語]
謡詠・謡謳・謡歌・謡吟・謡言・謡・謡誦・謡俗・謡・謡伝
[下接語]
謳謡・歌謡・吟謡・詩謡・俗謡・長謡・塗謡・童謡・風謡・諷謡・民謡・妖謡・俚謡

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改訂新版 世界大百科事典 「謡」の意味・わかりやすい解説

謡 (うたい)

能楽,すなわち能と狂言声楽部分の称。ただし,ふつうには能の声楽のみを指す。同類の語に謡曲があり,これが能の詞章を,主として読む対象として文学的に扱う場合の称呼であるのに対し,謡は,広義には狂言をも含めて,演唱や鑑賞の対象として音楽的あるいは芸能的に扱うときに用いられる。なお,能ではコトバ(詞)の部分をも含めて謡というのに対し,狂言では節付けされた部分に限定して用いる。能の謡は,せりふと地の文章のほか,作者の批評文や感想文などからなっているが,せりふを地謡が謡ったり,ト書きを立方が謡ったりするなど,独特の演出形式がある。能の一部分である謡は,能と切り離してこれだけでも演奏や鑑賞の対象として広く愛好されている。謡のみを稽古する素人の数はきわめて多く,それが能界の経済的基盤となっているほどである。

 謡の音楽構造は,旋律様式の上からはコトバとフシ(節)に,リズム様式の上からは拍子不合(ひようしあわず)と拍子合(ひようしあい)に,それぞれ分けられる。コトバというのは,節付けされていない部分,すなわち音楽的に作曲されていない部分であるが,特定の抑揚をつけて謡われる。それに対しフシは,音楽的に作曲されている部分で,謡本ではゴマ点によって作曲の内容が示される。フシは,さらにヨワ(弱)吟とツヨ(強)吟の2種に分けられる。両者は,発音,発声,息扱い,ビブラートのつけ方,音階などの相違の総合によって,きわめて対照的な性格を見せ,ヨワ吟は優美,風雅,温和,哀愁などの表現に,ツヨ吟は勇壮厳粛,爽快,祝賀などの表現に,それぞれ用いられる。ヨワ吟とツヨ吟の違いのなかでももっとも目だつのは音階の違いで,ツヨ吟では音階音相互の音程関係が極端に狭くなっているのであるが,これはおそらく江戸時代の初期に当時のヨワ吟から分かれて変化しはじめ,幕末ごろ現在の形になったものと推定されている。拍子不合というのは,詞章の各音節が八拍子(やつびようし)という拍節の第何拍であるかということが規定されていないものをいう。それに対して拍子合は,各音節が八拍子のどの拍であるのかが規定されているものをいい,規定のされ方によって,平(ひら)ノリ,中(ちゆう)ノリ,大(おお)ノリの3種に分かれる。平ノリは,詞章が七五調,中ノリは八八調,大ノリは四四調を基本とし,それぞれの各句が,八拍子一クサリに配分されて拍が決定する。これらのなかでは,拍子不合と平ノリとがもっとも用例が多く,中ノリがもっとも少ない。狂言の謡は,能の謡を取り入れたものと狂言独自のものとがあり,その種類は能の場合より多いといえる。それら狂言謡の全部,あるいは狂言独自の謡全部を狂言小歌ということもあるが,能楽研究者はこの用語法をあまり使わない。近世邦楽でも,能の謡の技法を取り入れているが,ツヨ吟を取り入れた部分に限って謡とか謡ガカリなどと称する。三味線や箏などの楽器は,その部分では原則として伴奏しない。
謡曲
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百科事典マイペディア 「謡」の意味・わかりやすい解説

謡【うたい】

謡曲(ようきょく)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「謡」の解説


うたい

謡曲(ようきょく)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「謡」の意味・わかりやすい解説


うたい

謡曲

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うたい

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【能】より

… こうしたくふうの積み重ねにもとづく様式の部分的変動は,後にも長く続く。たとえば,現在の(うたい)にあるヨワ(弱)吟,ツヨ(強)吟という二つの吟型(ぎんがた)が分化したのは江戸時代17世紀末のことだが,その音階はその後も変化を続け,現在の音階に固定したのは江戸最末期から明治時代にかけてである。また詩型とリズムの関係を規制する地拍子も,現在の形式となったのは明治時代以降である。…

【ユリ】より

…各種のユリに細分し,それぞれ固有の名称を与えるのがもっとも目立つのもこの分野といえよう。平曲や(うたい)でも各種のユリが区別されるが,とくに謡の場合は,実際の旋律と名称との対応関係が,流派によって異なることがあるので注意が必要である。狂言謡には,小歌という謡を特徴づける特別なユリがある。…

※「謡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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