本手(読み)ホンテ

デジタル大辞泉 「本手」の意味・読み・例文・類語

ほん‐て【本手】

本来の腕前。持ち前の技量
修業を積んだ腕前であること。また、その腕前。くろうと。「本手の将棋指し」
囲碁・将棋などの勝負事で、その局面での本筋の手。「ここではをつくのが本手だ」
《「ほんで」とも》
三味線箏曲そうきょくなどで、二つの異なった旋律で合奏するとき、基本の旋律。また、その演奏者。
㋑三味線を高低2音で合奏するとき、高音を奏する上調子うわぢょうしに対して低音を奏する三味線。また、その演奏者。調子。
三味線組歌で、本手組のこと。⇔破手はで

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精選版 日本国語大辞典 「本手」の意味・読み・例文・類語

ほん‐て【本手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. その人の有する真の技量。本来の腕前。
  3. その道のくろうと。
    1. [初出の実例]「本手よりはましなりとほめらるる」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品三五)
  4. 本当の正しい手法。本式。また、勝負事などで、その局面で使うべき本筋の手。
    1. [初出の実例]「本手(ホンテ)の粋といふは、いかな太夫なりとも、先これえと座上え請する事なかれ」(出典:浮世草子・男色十寸鏡(1687)上)
  5. 邦楽で用いる語。
    1. (イ) 三味線や箏曲(そうきょく)の演奏で、基本の旋律のこと。
    2. (ロ)(うわ)調子に対する地(じ)調子の別名。
    3. (ハ) 三味線組歌の本手組のこと。
      1. [初出の実例]「本手(ホンテ)端手、新曲綿蛮として」(出典:歌謡・松の葉(1703)序)
    4. (ニ) 三味線組歌の別称。
      1. [初出の実例]「小歌の本手(ホンテ)といふものをうたふ」(出典:浮世草子・諸国心中女(1686)一)
  6. ほんてすり(本手摺)」の略。
    1. [初出の実例]「本手(ホンテ) 本手摺なり」(出典:戯場楽屋図会(1800)上)
  7. 囲碁で、一見働きがないように見えるが、その部分で最も適切な着手。正着。
  8. 本当の筆蹟。
    1. [初出の実例]「ひとめでにせと本手を見わけ」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「本手」の意味・わかりやすい解説

本手 (ほんて)

日本音楽の用語。〈ほんで〉ともいう。本格的な手,本来の手の意味であるが,種目・時代によって異なる。三味線音楽の種目分類用語としては,伝承上の規範曲中の最古典たるものをいい,三味線の組歌全体をいうが,〈本曲〉ともいい,尺八や胡弓の〈本曲〉とほぼ同様な概念で用いられる。ただし,組歌の中を細分類して,その中でも最古典である《琉球組》以下の〈表七曲〉のみをとくに〈本手組〉といって,柳川検校作曲の〈破手組〉と区別することもある。また,三味線伴奏の流行歌曲でも,最も古い〈平九節(ひらくぶし)〉を〈本手の小歌〉といって,それ以降の〈破歌〉と区別することもある。三味線と限らず邦楽曲全般において,同一曲で異なる手付けが数種ある場合,本来の原旋律を〈本手〉といい,これに対して,その第2次以降の旋律を〈替手〉という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「本手」の意味・わかりやすい解説

本手
ほんて

日本伝統音楽における合奏用語。長唄(ながうた)をはじめとする江戸時代の三味線音楽と、地歌(じうた)において、合奏の場合の原旋律のことをいう。長唄や浄瑠璃(じょうるり)の器楽合奏の部分、すなわち合方(あいかた)のなかには、原旋律とそれに対する旋律が演奏される部分があるが、この場合の原旋律を本手といい、それに対する旋律を替手(かえで)という。替手は本手とまったく異なる旋律で、両方とも三味線で奏する場合と、本手を三味線、替手を箏(こと)のように異なる楽器で演奏する場合がある。替手は、一つの本手に対して一つではなく、2種以上作曲されることもある。また地歌において、本手をのせる短い単純な基本的旋律型である「地(じ)」も替手の一種である。これに対して、本手の一オクターブ上の旋律を演奏する場合があり、この対旋律を上調子(うわぢょうし)という。

 また三味線組唄のなかで、石村検校(けんぎょう)の作品といわれる七曲を、破手(はで)とよばれる数曲に対してとくに本手とよぶ。さらに、明暗(めいあん)流尺八外曲(がいきょく)においては、宗教的な性格をもち、比較的古くから伝承されている曲のことを本手と称している。

[渡辺尚子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「本手」の意味・わかりやすい解説

本手
ほんて

日本音楽の用語。基本の手の意。 (1) 合奏用語 「替手」などに対する原旋律のパートをいう。 (2) 楽曲分類名称 「破手」などに対する基本曲。三味線組歌の総称でもあったが,そのうちの最古典『琉球組』以下7曲だけを,のちの派手組以下に対して特に「本手」または「本手組」といい,「表組」とも称する。胡弓曲でも,その本来の本曲の別称。尺八曲では,特に明暗流において,本曲のうちの最重要古伝の3曲を除く曲中,比較的古くからある宗教性の濃いものを本手といい,『鹿の遠音』や『鶴の巣籠』など芸術性の濃いものを破手ということもある。

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百科事典マイペディア 「本手」の意味・わかりやすい解説

本手【ほんて】

日本音楽用語。(1)合奏で,基本になる旋律のこと。これと合奏する旋律は替手(かえて)。(2)三味線組歌で,最古に作曲された一群の曲の総称。本手組とも。石村検校またはその門下の虎沢検校の作曲という。これに対して,その型を破って新しく作曲された曲を破手(端手)(はで)(組)と総称したが,後には三味線組歌の総称としても用いられた。

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世界大百科事典(旧版)内の本手の言及

【替手】より

…〈かえで〉ともいう。原旋律(本手)に対して別に作られた旋律をいい,とくに地歌,箏曲,長唄に多い。地歌では,同一曲にいくつもの異なる手付け(三味線で演奏する部分の作曲)がなされた場合に,その第2次以降の手をいったが,そのなかで原旋律に対して旋律的またはリズム的に異音性の強いものは,本手との合奏が行われるようになり,異なる楽器に移して演奏されるようにもなった。…

【地歌】より


[歴史と分類]
 三味線音楽の芸術化につとめたのは,16世紀半ばから17世紀半ばにかけて,三味線そのものの伝来・改良に関与した盲人音楽家たちであったが,彼らが作曲した最古典曲は,前代または当時流行していた小編の歌曲(小歌)を組み合わせて,これに三味線を結びつけて芸術歌曲化したものであった。これを,〈三味線本手〉ないし〈本手〉と称したが,のちには〈三味線組歌〉などとも称した。その中でも最古典曲は,石村検校作曲とされる《琉球組》であるが,虎沢検校を経て柳川検校に至るまでに,増補・整理された。…

※「本手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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