改訂新版 世界大百科事典 「オタテドリ」の意味・わかりやすい解説
オタテドリ (尾立鳥)
tapaculo
スズメ目オタテドリ科Rhinocryptidaeの鳥の総称。この名は,この科の鳥の多くが尾羽をよく立てる性質による。約12属26種からなり,中央アメリカに3種(そのうちの2種は固有種)が分布し,南アメリカには上述の2種を除く全種が分布する。平地から山地にかけての森林,灌木の点在するよく茂った草地,ヨシ原などにすみ,おもに地上かそれに近い高さの低木層内で生活している。全長約10~25cm。どの種も白色,灰色,黒色,褐色,赤色などの羽色で,全体にじみな鳥である。あしはよく発達していて,とくに地上で生活している種はネズミのようにすばやく地上を走り,飛ぶよりも走って危険を避ける種が多い。尾羽はふつうの長さの種と,体の割りにかなり長い種とがあるが,どの種も活動中に尾羽をしきりに立てる。昆虫類と種子を主食とする。かれらの生態は詳しく研究されていないが,巣については,朽木の樹洞を利用する種,朽木に自分で樹洞をうがって巣をつくる種,草や細枝で球形の巣をつくる種,地面を掘って巣穴をつくる種などが知られている。どの種も渡りはせず,一年中群れにはならずに定住生活をしているようである。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報