オニヒラアジ(読み)おにひらあじ(その他表記)brassy trevally

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニヒラアジ」の意味・わかりやすい解説

オニヒラアジ
おにひらあじ / 鬼平鰺
brassy trevally
[学] Caranx papuensis

硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。和歌山県以南の太平洋沿岸、屋久島(やくしま)、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、台湾、オーストラリア、マルケサス諸島マリアナ諸島など太平洋とインド洋に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。体高は幼魚では高く、体長の36~40%であるが、成魚ではこれより低くなる。体の背縁は第2背びれまで普通に湾曲し、腹側ではほとんど直線状。頭部の前縁の傾斜角度は緩い。吻端(ふんたん)は鈍く、吻長は眼径より長い。目に脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)がわずかに発達する。上顎(じょうがく)の後端は目の中央部の下方に達する。上顎には外側に1列の強い犬歯状の歯がまばらに並び、内側に小さい絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、前端で幅が広い。下顎には強い円錐歯(えんすいし)が1列に並ぶ。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に三角形の絨毛状の歯帯がある。鰓耙(さいは)は上枝に7~9本、下枝に18~21本。背びれは2基で、第1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは1棘21~23軟条。臀(しり)びれは1棘16~19軟条で、前方に2本の遊離棘がある。第2背びれと臀びれの前部の軟条は鎌(かま)状に伸びる。側線は前部で緩く湾曲し、第2背びれの第6~7軟条下から体側の中央を後方に向かって直走する。稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗(うろこ)。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)は側線の直走部の全長にわたって発達し、31~39枚。胸部の腹面は腹びれ前方の小さい鱗のある小区域を除いて完全に無鱗である。成魚では体色は背側面では暗黄緑色、腹側面では銀白色。体長20センチメートル以上になると体側面に小黒点が散らばり、成長するにつれて数が多くなる。鰓孔の上端に三角形の明瞭(めいりょう)な淡色斑(はん)があるが、黒斑はない。各ひれは黄色~暗色で、尾びれ下葉の後縁は白色。成魚は外洋に面した沿岸のサンゴ礁や岩礁域にすみ、幼魚は内湾や河口域にいる。沖縄本島の内湾で11月ころに体長10~15センチメートルの若魚がよく見られる。成魚はおもに魚類、甲殻類、イカ類などを捕食し、最大体長は80センチメートルほどに達する。定置網、刺網(さしあみ)、釣りなどで漁獲され、刺身、煮魚、フライなどにする。

 近縁種のイトウオニヒラアジC. heberiは背びれと臀びれの合計の軟条数が34~37と、本種(37~42)よりも少なく、鰓孔の上端の淡色斑がないことなどで本種と区別できる。また、ロウニンアジやカスミアジにも似るが、本種には鰓孔の上端の淡色斑があること、尾びれの下葉に白色縁があることなどで区別できる。

[尼岡邦夫 2024年5月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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