改訂新版 世界大百科事典 「オンブバッタ」の意味・わかりやすい解説
オンブバッタ
Atractomorpha lata
直翅目オンブバッタ科の昆虫。頭部が,ふつうのバッタに見られるように卵形でなく,円錐形になった中型のバッタ。あたかも親が子を背負うごとく,繁殖期になると,大きな雌が小さい雄を背に乗せているのがしばしば見られるので,オンブバッタの名がある。これは実際にはバッタにふつうに見られる交尾姿勢であって,本種だけが特別にこのような行動をとるというわけではない。体長は雄20mm内外,雌35mm内外。琉球諸島を含む日本全国,朝鮮半島,中国にふつうに分布する。体色は緑色型と褐色型のほか,灰色型などがある。頭部は前方へつき出て,背面から見ると長三角形をしている。頭頂はとがらずまるみを帯びる。触角は平たく短剣状。前翅は細長く,先端は鋭くとがっていて,全体に体の前後がとがる舟形状に見える。成虫は6~11月の間見られ,草むらにふつう。あまり飛ぶことはなく,また跳びはね方も,それほど活発でない。近似種に琉球諸島や中国にすむアカハネオンブバッタA.sinensisがあり,これは後翅の付け根がピンクになることで区別される。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報