国際河川(読み)コクサイカセン(英語表記)international river

デジタル大辞泉 「国際河川」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐かせん【国際河川】

数か国の領域を貫流し、または国境となっている河川で、条約によってすべての国に航行自由が認められているもの。ドナウ川ライン川など。

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精選版 日本国語大辞典 「国際河川」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐かせん【国際河川】

〘名〙 数か国の国境となり、または、数か国にまたがって流れる河川で、沿岸諸国が条約によって船舶の自由航行を認めたもの。また、国際条約により非沿岸諸国を含むすべての国の船舶の自由航行を認めた河川。ドナウ河、ライン河、エルベ河などがある。〔現代文化百科事典(1937)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「国際河川」の意味・わかりやすい解説

国際河川 (こくさいかせん)
international river

国際河川については,一般的な条約がある。それは,1921年にバルセロナで締結された〈国際関係を有する可航水路の制度に関する条約〉(通称国際河川条約)と,これに付属する国際河川規程である。後者によれば,数ヵ国の境界を構成し,または,数ヵ国を貫流する河川であって,海へ,または,海から自由に航行できるものについては,他の条約当事国の船舶に対して自由に航行を許す。このような河川が,国際河川である。河川はもともと内水の一部であるから,領域国は,これを外国船舶通航に開放すべき義務を負わない。しかし,この原則を厳しく守ると,河川の利用上不便である。そこで,国際河川条約以前から,いくつかの条約により,国際河川の制度が成立していた。

 すなわち,1815年のウィーン会議最終議定書は,ヨーロッパのすべての国際河川についての一般原則を定めた。これを実際に適用するため,ドナウ川については56年にパリ条約,ライン川については68年にマンハイム条約が締結された。1919年のベルサイユ講和条約は,ライン川,ドナウ川,エルベ川オーデル川,ネマン(ニーメン)川の自由航行と国際管理を規定した。前述の国際河川規程は,条約当事国の船舶にのみ自由航行を認めることを原則とする。しかし,ドナウ川,ライン川,エルベ川は,非当事国の船舶にも開放されるたてまえである。

 国際河川については,国際河川委員会が管理に当たる。たとえば,ドナウ川については,パリ条約で設立されたヨーロッパ委員会が,ドナウ川下流を管理した。第1次大戦後は,ベルサイユ講和条約等で設立された国際委員会が,ドナウ川上流を管理した。第2次大戦後は,ソ連および沿岸の共産諸国がドナウ川の航行制度に関する条約を結び,従来の2委員会を廃止して,ドナウ川委員会を設立した。60年,オーストリアも加入。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際河川」の意味・わかりやすい解説

国際河川
こくさいかせん
international river

川の流域が複数の国に及ぶ水路を国際河川という。国はその領土に接する川の部分を領域として管轄する。流域国は国際的な合意によって、国際河川の航行および航行以外の利用について相互に協力することを求められている。ライン川などヨーロッパの若干の河川は、19世紀以来商業用航洋船舶の航行に開放されてきた。1921年に国際関係を有する可航水路の制度に関するバルセロナ条約と規程が採択され、海洋へおよび海洋から航行できる水路は、通商・交通の自由のためにすべての商船の航行に開放されるとの原則が定められた。沿河国は、通航船舶および積み荷に対して、水路とその施設の維持・改良費の範囲を超えて課徴金を課してはならないとされた。その後、約半世紀を経て灌漑(かんがい)、水力発電、飲料水など、川の水の利用が増大し、また廃水などによる河川水の汚染の防止が緊要な課題となった。国連総会は国際法委員会の報告をもとに、1997年5月27日に「国際水路の非航行的利用の法に関する条約」(「国際水路の非航行的利用条約」)を採択した。この条約によれば、(1)流域国はその流域内において河川を衡平かつ合理的な方法において利用し、他の国に重大な害を与えないよう相当の注意を払う、(2)国は河川水の有害な汚染を防止し、国際河川の生態系を保護し保全する義務を負う、(3)国際河川の管理は、河川ごとに設けられる国際河川委員会を通じて行われる、とされている。

[中村 洸]

『地球環境研究会編『地球環境条約集 第4版』(2003・中央法規出版)』『大沼保昭・藤田久一編『国際条約集 2003年版』(2003・有斐閣)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際河川」の意味・わかりやすい解説

国際河川
こくさいかせん
international river

複数国の領域を貫流し,あるいは複数国の国境を流れて海との交通が可能な河川で,沿河国 (riparian countries) 同士,あるいは沿河国と非沿河国が条約を結んで,沿河国のみならず非沿河国の船舶にも通航を認めたものをいう。河川は本来所在国の内水であり,外国船舶の通航を認める義務はない。しかし複数国を貫流し,あるいは国境を流れて海に注ぐ河川に関しては,船舶の自由な通航を認めることが通商上望ましい。そこで条約によって外国船舶の通航を認めることが古くから行われてきた。 1815年のウィーン会議最終議定書は,ヨーロッパの諸河川は沿河国の条約によって自由航行を認めるべきことを宣言し,その後ライン,ダニューブ (ドナウ) ,エルベ川などの国際河川化が実現した。 1921年には「国際的利害関係ある可航水路に関する条約」 (バルセロナ条約) が締結され,国際河川に関する一般的なルールが定められた。

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百科事典マイペディア 「国際河川」の意味・わかりやすい解説

国際河川【こくさいかせん】

通常,国家間の国境を形成し,または複数国の領土を貫流するもので,条約によって所在国の権限が制限され,他国船舶が自由に航行できる河川。条約加盟国または沿岸国だけに利用を認めるものと非加盟国または非沿岸国にも開放するものとがある。ドナウ川,ライン川などは後者に属する。1921年一般的な国際河川条約が締結された。

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