国際河川については,一般的な条約がある。それは,1921年にバルセロナで締結された〈国際関係を有する可航水路の制度に関する条約〉(通称,国際河川条約)と,これに付属する国際河川規程である。後者によれば,数ヵ国の境界を構成し,または,数ヵ国を貫流する河川であって,海へ,または,海から自由に航行できるものについては,他の条約当事国の船舶に対して自由に航行を許す。このような河川が,国際河川である。河川はもともと内水の一部であるから,領域国は,これを外国船舶の通航に開放すべき義務を負わない。しかし,この原則を厳しく守ると,河川の利用上不便である。そこで,国際河川条約以前から,いくつかの条約により,国際河川の制度が成立していた。
すなわち,1815年のウィーン会議最終議定書は,ヨーロッパのすべての国際河川についての一般原則を定めた。これを実際に適用するため,ドナウ川については56年にパリ条約,ライン川については68年にマンハイム条約が締結された。1919年のベルサイユ講和条約は,ライン川,ドナウ川,エルベ川,オーデル川,ネマン(ニーメン)川の自由航行と国際管理を規定した。前述の国際河川規程は,条約当事国の船舶にのみ自由航行を認めることを原則とする。しかし,ドナウ川,ライン川,エルベ川は,非当事国の船舶にも開放されるたてまえである。
国際河川については,国際河川委員会が管理に当たる。たとえば,ドナウ川については,パリ条約で設立されたヨーロッパ委員会が,ドナウ川下流を管理した。第1次大戦後は,ベルサイユ講和条約等で設立された国際委員会が,ドナウ川上流を管理した。第2次大戦後は,ソ連および沿岸の共産諸国がドナウ川の航行制度に関する条約を結び,従来の2委員会を廃止して,ドナウ川委員会を設立した。60年,オーストリアも加入。
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
川の流域が複数の国に及ぶ水路を国際河川という。国はその領土に接する川の部分を領域として管轄する。流域国は国際的な合意によって、国際河川の航行および航行以外の利用について相互に協力することを求められている。ライン川などヨーロッパの若干の河川は、19世紀以来商業用航洋船舶の航行に開放されてきた。1921年に国際関係を有する可航水路の制度に関するバルセロナ条約と規程が採択され、海洋へおよび海洋から航行できる水路は、通商・交通の自由のためにすべての商船の航行に開放されるとの原則が定められた。沿河国は、通航船舶および積み荷に対して、水路とその施設の維持・改良費の範囲を超えて課徴金を課してはならないとされた。その後、約半世紀を経て灌漑(かんがい)、水力発電、飲料水など、川の水の利用が増大し、また廃水などによる河川水の汚染の防止が緊要な課題となった。国連総会は国際法委員会の報告をもとに、1997年5月27日に「国際水路の非航行的利用の法に関する条約」(「国際水路の非航行的利用条約」)を採択した。この条約によれば、(1)流域国はその流域内において河川を衡平かつ合理的な方法において利用し、他の国に重大な害を与えないよう相当の注意を払う、(2)国は河川水の有害な汚染を防止し、国際河川の生態系を保護し保全する義務を負う、(3)国際河川の管理は、河川ごとに設けられる国際河川委員会を通じて行われる、とされている。
[中村 洸]
『地球環境研究会編『地球環境条約集 第4版』(2003・中央法規出版)』▽『大沼保昭・藤田久一編『国際条約集 2003年版』(2003・有斐閣)』
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