日本大百科全書(ニッポニカ) 「オートマティスム」の意味・わかりやすい解説
オートマティスム
おーとまてぃすむ
automatisme フランス語
シュルレアリスムの絵画や詩で意識下の世界や思考の働きを表現する重要な手法の一つで、自動記述法と訳される。詩人アンドレ・ブルトンはシュルレアリスムを、「心の純粋な自動現象であり、それを通して、話すこと、書くこと、あるいは他のあらゆるやり方によって、思考の真の働きを表現しようとするものである」と定義しており、自動記述とは、なんらかの既成概念や理性などにとらわれることなく無意識のうちに行われる創造作用をさす。現実にはありえない視覚の世界を開示しようとしたシュルレアリスムにおいて、フロイトの理論と結び付いて重要視された。ブルトンは1924年のシュルレアリスム宣言のなかで、無意識のうちにつくりだされた詩や絵画にこそ、美学的、道徳的ないっさいの先入観を離れた真の思考が展開されることを唱えた。すでにアルプなどダダの作家も試みていたが、シュルレアリストではマックス・エルンスト、アンドレ・マッソン、ホアン・ミロらが、コラージュやデカルコマニーといった独特な手法のもとに、この理論の例証となる作品を制作した。第二次世界大戦後のアクション・ペインティングやアンフォルメルの絵画も、これを踏まえて展開されたものと考えることができる。
[千葉成夫]