シュルレアリスムの絵画や詩で意識下の世界や思考の働きを表現する重要な手法の一つで、自動記述法と訳される。詩人アンドレ・ブルトンはシュルレアリスムを、「心の純粋な自動現象であり、それを通して、話すこと、書くこと、あるいは他のあらゆるやり方によって、思考の真の働きを表現しようとするものである」と定義しており、自動記述とは、なんらかの既成概念や理性などにとらわれることなく無意識のうちに行われる創造作用をさす。現実にはありえない視覚の世界を開示しようとしたシュルレアリスムにおいて、フロイトの理論と結び付いて重要視された。ブルトンは1924年のシュルレアリスム宣言のなかで、無意識のうちにつくりだされた詩や絵画にこそ、美学的、道徳的ないっさいの先入観を離れた真の思考が展開されることを唱えた。すでにアルプなどダダの作家も試みていたが、シュルレアリストではマックス・エルンスト、アンドレ・マッソン、ホアン・ミロらが、コラージュやデカルコマニーといった独特な手法のもとに、この理論の例証となる作品を制作した。第二次世界大戦後のアクション・ペインティングやアンフォルメルの絵画も、これを踏まえて展開されたものと考えることができる。
[千葉成夫]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…その後パリ・ダダ時代には表面化しなかったが,22年にいたって,いわゆる霊媒現象との関連が確認され,デスノスらの催眠術をかけられた状態での口述・記述の実験へと発展する。また同時期の夢の記述の実験からも,より広い意味での〈オートマティスムautomatisme(心の自動性)〉の存在が仮説され,そのことがシュルレアリスム理論構築のきっかけとなった。24年の《シュルレアリスム宣言》の論旨はもとより,同書の後半部にブルトンの代表的な自動記述テキスト集《溶ける魚》が収められたという事実からも,シュレアリスムの運動におけるこの方法の重要性は明らかであろう。…
…1920年代のはじめにフランスの詩人ブルトンらによって開始された文学・芸術上の運動,およびその思想・方法等を指す。発端は1919年に彼とスーポーとが試みたいわゆる〈自動記述(オートマティスム)〉(《磁場》1920)にある。この実験の結果,思考の純粋かつ原初的な姿に触れうると信じた彼らは,アラゴン,エリュアールらとともに,その確信にもとづく新しい思想と運動の可能性を探りはじめた。…
※「オートマティスム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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