日本大百科全書(ニッポニカ) 「デカルコマニー」の意味・わかりやすい解説
デカルコマニー
でかるこまにー
décalcomanie フランス語
転写法と訳される。一般名詞としては、薬品処理を行った紙の上に描かれた絵を器の表面に押し当ててそっくり転写する、陶器やガラスの絵付(えつけ)に用いられる方法をいう。シュルレアリスムにおいては、「コラージュ」や「フロッタージュ」と並んで用いられた美術の一手法。ガラス板やアート紙など滑性の紙の上に絵の具を塗り、上から別紙を押さえて像を写し取ったり、あるいは絵の具を塗った紙を二つ折りにして開くことによっていろいろな形を得る方法をさす。これらは、まえもって計算されたり意識されたことのない、まったくの偶然によってできあがる無意識像であり、その抽象形体はさまざまな連想を呼び起こすため、シュルレアリストにとってかっこうの表現手段となった。1935年オスカー・ドミンゲスによって発見されたといわれるが、多くの人が手がけ、とくにエルンストに優れた作品がある。なお心理学ではロールシャッハ・テストに使われている。
[千葉成夫]