日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーリウ」の意味・わかりやすい解説
オーリウ
おーりう
Maurice Hauriou
(1856―1929)
フランスの公法・法哲学者。シャラント県ラディーユに生まれる。トゥールーズ大学法学部教授。法学者オーリウは社会学にも造詣(ぞうけい)が深く、社会学を基礎にした法理論を提唱し、デュギーと並んで当時のフランス公法学界を代表した。カトリック教徒で、伝統的な自由主義、個人主義を信奉したオーリウは、デュギーと同じく、法人格理論に強く反対したが、他方、デュギーが法を国家とはまったく無関係に社会のなかで生成、発展するとみることにも反対し、法人格理論を客観法的観点から再構成することを提唱し、「制度の理論」を生んだ。オーリウは、法の理念が社会的現実のなかに浸透していく過程の分析のなかから、権威者のイニシアティブによる規範の定立が存在することをみいだし、他方で、その規範が正義に適合しているときには民衆による受容によって慣習法化し、やがてそこに社会的均衡が生まれ、かくして理念が現実を秩序づけるに至ることを確認した。制度はこの均衡によって生まれるものであり、この制度こそが法の源泉であると考えた。オーリウは制度の理論を基礎に『公法原論』Principes de droit public(1910、1916)において伝統的な理論を克服する新たな公法理論を確立し、とくに行政法の領域において大きな影響を与えた。
[高橋和之]