デュギー(読み)でゅぎー(英語表記)Léon Duguit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デュギー」の意味・わかりやすい解説

デュギー
でゅぎー
Léon Duguit
(1859―1928)

フランスの法哲学者・公法学者。ボルドー近郊のリブルヌに生まれる。カーン大学を経てボルドー大学法学部教授となり、憲法学を担当。デュギーはH・スペンサーの社会有機体論、A・コントやE・デュルケームの社会学の影響を受け、社会学的実証主義を法科学の方法論として提起した。フランス革命によって確立された個人主義的法制度および注釈学派の方法論が、資本主義発達に伴う19世紀末からの社会現象の多様化に対応しえない、との認識にたって、社会現象を貫いている社会連帯la solidarité socialeの事実の観察から新たな法理論を構築した。人間の行為は社会連帯類似による連帯と分業による連帯)に合致する場合に社会的・法的価値を有するとの観点から、社会連帯を弱めるような何事もなすべきでなく、これを強化するようなあらゆることをなせ、という行為規範を導き出し、これを法の準則la règle de droitもしくは客観法le droit objectifとよんだ。デュギーは、この準則を統治者・被治者双方を規律するものと考え、これによる国家権力制限を説くとともに、社会連帯強化のための国家の積極的義務(公共役務)および社会権の理論を展開した。主著に『国家/客観法・実定法』L'État ; le droit objectif et la loi positive、『憲法概説』Traité de droit constitutionnel(全5巻)などがある。

[畑 安次]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デュギー」の意味・わかりやすい解説

デュギー
Duguit, Léon

[生]1859.2.4. リブールヌ
[没]1928.12.18. ボルドー
フランスの法学者。 1892年ボルドー大学教授,1919年から 28年までは同大法科大学長。独特の実証主義的な観点から伝統的法学,すなわちフランスの自然法理論やドイツの法実証主義的国法学の自然権や主権といった諸概念を形而上学的と批判した。他方,É.デュルケムの影響のもとに法の基礎を社会連帯に求め,そこから国家の「公役務」の観念を導出し,社会国家化,積極国家化のもとでの公法学の再構築を目指した。 H.ラスキに大きな影響を及ぼしている。主著『憲法論』 (1911) ,『ナポレオン法典後の私法の変遷』 (17) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報