日本大百科全書(ニッポニカ) 「カグー」の意味・わかりやすい解説
カグー
かぐー
kagu
[学] Rhynochetos jubatus
鳥綱ツル目カグー科の鳥。この科Rhynochetidaeはカグー1種だけからなる。全長約56センチメートル。背面はスレート灰色で、後頭に房状の冠羽があり、腹は薄い灰色である。翼には黒、白、栗(くり)色の横帯があるが、この横帯は、翼を広げてディスプレーするときだけ目だつ。嘴(くちばし)と足は橙赤(とうせき)色。ニューカレドニア島の特産で、島の奥地の深い森林にすむ。カグーの名は、原住民の呼び名(彼らはこの鳥の声から名づけた)に由来する。幅広い大きな翼があるが、飛ぶことはほとんどなく、もっぱら地上で生活し、夜間活動する。その大きな声は遠くまで聞こえるが、野生のものの姿を見た人は非常に少ない。食物は主として地上と土中の昆虫類、小動物、ミミズなどで、プラコスティルス属Placostylusの巻き貝をとくに好むといわれる。野生の鳥の繁殖はまだわかっていないが、飼育下では地上に小枝と葉を集めて巣をつくり、灰色と褐色の斑(ふ)のあるクリーム色の卵を1個産む。抱卵と育雛(いくすう)は雌雄交代で行う。この鳥は、かつては食用にされるほど多くいたが、森林の伐採とイヌやネコなどの天敵の移入で急激に減少し、現在では絶滅のおそれのある鳥の一つとして、国際保護鳥に指定されている。
[森岡弘之]