カプセル型の医療検査機器。「カプセル内視鏡」とは、文字通り、薬のカプセルと同じような形態の消化器内視鏡であり、口から飲んで消化管を検査する。
従来の消化器内視鏡は、消化器の癌(がん)などの診断には優れていたが、検査時の苦痛によって敬遠する患者が多く、さらに、穿孔(せんこう)や出血などの合併症も少なくなかった。ところが2000年、国際的な学術誌『Nature』に、イスラエルのギブン・イメージング社Given Imaging Ltd.からの研究報告として、これまでの内視鏡とはまったくコンセプトの異なる内視鏡であるカプセル内視鏡が紹介された。それ以来多くの国に急速に普及し、日本でも2007年(平成19)に認可され、健康保険適用となった。2010年の時点では、日本では小腸用のカプセル内視鏡のみが認可され、臨床に用いられている。
カプセル内視鏡の大きさは、直径11ミリメートル、長さ26ミリメートルで、薬のカプセルよりやや大きい程度で、飲むのに苦痛はない。レンズと受信・発信装置、それにバッテリーを内蔵している。検査機器としては、このカプセルと、センサーアレイ、データレコーダーそれにワークステーションから構成されている。カプセルから発信する情報をセンサーで受信し、ワークステーションで解析する。検査のために消化器内に空気を入れて拡張する必要がないため、生理的な状態(患者の身体に何も行っていない通常の自然な状態)で検査ができる。現在国際的には、小腸以外にも食道や大腸用のカプセル内視鏡が開発され臨床応用されているが、日本ではまだ小腸用以外は認可されていない。
カプセル内視鏡による合併症はほとんどみられないが、小腸などの狭窄(きょうさく)による滞留(たいりゅう)が指摘されている。これを防ぐため、ダミーともいうべきパテンシーカプセル(内服後に溶ける検査用のカプセルで、狭窄があるかどうか事前に調査するために用いる)が開発された。これによってあらかじめ、狭窄例を除外することができる。パテンシーカプセルによる事前の検査で狭窄例が判明したら、狭窄例にはカプセル内視鏡は用いない。
カプセル内視鏡の問題点として、検査はできるが、病理標本を採取したり、ポリープや早期癌の内視鏡的治療ができないことがあげられる。この問題に関しては、カプセルはあくまでスクリーニング(検査)としての役割をもち、治療などは通常内視鏡や新しく開発されたダブルバルーン内視鏡によって行うという役割分担が提唱されている。今後、体外からの操作性や治療などへの応用も研究され、消化器癌などの診断・治療について大きな期待が寄せられている。
[寺野 彰]
(石川れい子 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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