日本大百科全書(ニッポニカ) 「カポーティ」の意味・わかりやすい解説
カポーティ
かぽーてぃ
Truman Capote
(1924―1984)
アメリカの小説家、劇作家。9月30日ニューオーリンズで生まれ、特記するほどの学校教育を受けず、校正係、タップダンサー、『ニューヨーカー』誌雑務係などをしながら、短編『夜の樹(き)』『ミリアム』を発表。異常な性癖、感受性をもつ少年の精神形成を描いた『遠い声、遠い部屋』(1948)で認められる。これは短編集『夜の樹その他の物語』(1949)と同じアンチ・リアリズムの作品で、人間心理の「闇(やみ)の世界」を描いている。叙情性に富む『草の竪琴(たてごと)』(1951。翌年作者が脚色上演)のほか、『ミューズの声聞こゆ』(1956)、『ティファニーで朝食を』(1958)などののち、『冷血』(1966)では一転して写実に徹して「非虚構小説(ノンフィクション・ノベル)」を唱え、反響をよんだ。『クリスマスの思い出』(1966)、『感謝祭のお客さま』(1968)は叙情的回想記。「恐るべき子供」として出発、作風はさまざまな諧調(かいちょう)を帯びているが、初期から一貫してみられる傾向は、生きることのむなしさ、人間の孤独、魂をいやす楽園の希求であった。1984年8月25日没。2005年(平成17)、日本では代表作『冷血』の新訳が出版され話題となった。
[稲澤秀夫]
『稲澤秀夫著『トルーマン・カポーティ研究』(1970・南雲堂)』▽『ジェラルド・クラーク著、中野圭二訳『カポーティ』(1999・文藝春秋)』