からすみ(鱲子)(読み)からすみ

世界大百科事典 第2版の解説

からすみ【からすみ(鱲子)】

ボラの卵巣塩乾品。中国では〈子〉などと書き,古くから作られていたようである。干し上げた形が唐墨に似ているためこの名がある。ボラの腹からとり出した卵巣を水洗いし,食塩をすりこんで樽につめ,5日ほどすると卵がしまってくる。これを淡水中で軽くもんで軟らかくしながら塩抜きをし,水を切って板に並べて干す。夜は屋内にとりこみ,軽い押しをかけて成形する。これを7~10日繰り返して仕上げる。あめ色をしており,薄く切って酒のさかななどにする。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

からすみ(子)
からすみ /

ボラの卵巣からつくる塩乾品。形が中国の墨、唐墨(からすみ)に似ているところからつけられた名という。ボラの卵巣を水洗(すいせん)後、食塩をすり込み、樽(たる)に詰めて一昼夜置いたのち塩抜きする。これを水の中でもみ、卵粒を離し、板の上に並べ、その上に板を置き、数段重ね、徐々に圧力をかけて水を絞り出す。翌日、簀子(すのこ)の上に並べて日干しし、夜は圧力をかける。加圧と日干しを繰り返し、およそ乾いた状態になったら日干しのみ行う。20日程度で製品となる。角張り、薄い飴(あめ)色をしたものが良品。
 江戸時代、長崎野母(のも)のからすみは、越前(えちぜん)(福井県)の「うに」、三河(愛知県)の「このわた」とともに「天下の三珍」としてもてはやされた。現在でも長崎でからすみの製造が行われている。長崎産のものは卵巣があまり成熟していないため卵粒が舌に触らず、ねっとりとしたうま味をもっている。ただし最近は原料が不足しているため、メキシコ、フロリダなどから塩蔵した卵巣を輸入し使用している。なお、台湾でもからすみがつくられているが、トド(大型のボラ)の卵巣を使うので製品も大きい。ただし熟卵のため、卵粒が舌に当たる。からすみは30%弱の脂肪を含み、不けん化物中にはセチルアルコールが多い。そのまま、またはあぶってから薄く切り、酒の肴(さかな)にする。また茶漬けにしてもうまい。生産量は少なく、高価なため、サメ卵とたらこから模造品がつくられ出回っている。[金田尚志]

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世界大百科事典内のからすみ(鱲子)の言及

【卵】より

…2日ほどでペースト状になり,さらに置くと固まって半透明になる。これを薄切りにすると〈からすみ〉に似ており,突出しに用いると好適である。【橋本 寿子】。…

【ボラ(鯔)】より

…スズキ目ボラ科の汽水魚(イラスト)。浸透圧調節の能力がすぐれており,川と海を自由に往き来できる。主として河口から塩分の低い内湾に生活するが,成熟が近づくと外洋に出て産卵場へ向かう。出世魚の一つで,稚魚から成魚まで段階別に各地でいろいろな名で呼ばれる。代表的なものはハク,ゲンプク,キララゴ(全長2~3cm),オボコ,オボッコ,イナッコ,スバシリ(3~18cm),イナ(18~30cm),ボラ(30cm以上)で,とくに大きくなったものをトド(〈とどのつまり〉の語源)という。…

※「からすみ(鱲子)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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