日本大百科全書(ニッポニカ) 「茶漬け」の意味・わかりやすい解説
茶漬け
ちゃづけ
飯(めし)に茶湯を注いだもの。平安時代には湯漬けの名で単に湯を加えたものであり、夏には水飯(すいはん)といって飯に冷水をかけて用いていた。茶湯を用いての茶漬けが一般化したのは室町時代以降であろう。江戸時代には簡素な食事の意にも用いられ、また、簡単な食事の店を茶漬け屋といったが、やがて豪華な茶漬けもできるようになった。茶漬けには、番茶を焙(ほう)じて熱湯を注ぎ、その浸出湯を用いるのがよいとされ、煎茶(せんちゃ)は不向きとされている。茶漬けには、のり、ごま塩、塩昆布、佃煮(つくだに)、みそ漬け、塩ざけ、干物などを添えるとよい。明治・大正の東京人のなかには塩煎餅(せんべい)を砕いて茶漬けに加えるのを好む人がいた。北越地方では古くから茶のかわりにだし汁を用いるのを特徴とし、これを越後(えちご)茶漬けともいう。現在の料理屋で茶漬けというと、このだし汁茶漬けのことで、これにタイ、マグロ、とり肉などを加える高級茶漬けが種々できている。
[多田鉄之助]
郷土料理の茶漬け
神奈川県小田原の魚玉茶漬けは、アジ、カツオ、クロダイ、コチなどの新しい魚を刺身状に切り、卵1個にしょうゆ大さじ4を加えてかき混ぜた中に漬けておき、炊きたての飯を茶碗(ちゃわん)に盛った上にこの魚をのせて、熱い番茶をかける。広島県尾道(おのみち)のえび茶漬けは、生きのよい小エビをさっとゆで、身だけをしょうゆにちょっと漬け、水切りして焼いてから手でむしり飯の上に散らし、熱い番茶を注ぐ。三重県のおけじゃは、煎(い)り米を釜(かま)の底に敷き、その上にサツマイモを並べ、水少量を加えて蒸す。イモをすりつぶし、煎り米といっしょに茶碗に盛り、塩少々をかけ、熱い番茶を注ぐ。三重県上野の養肝(ようかん)茶漬けは、戦国武将藤堂高虎(とうどうたかとら)が軍中食として考案したといわれるもの。シロウリの中にシソ、ショウガなどを詰めて1年間みそに漬け込んだものを薄切りにして、飯の上に並べて番茶をかける。島根県のぼてぼて茶は、抹茶の茶漬けである。新潟県小千谷(おぢや)地方の献残(けんざん)焼きは、焼きむすびに、みそとおろししょうがを塗って茶碗に入れ、熱い番茶を注いで食べる。
[多田鉄之助]