日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラフトマス」の意味・わかりやすい解説
カラフトマス
からふとます / 樺太鱒
pink salmon
[学] Oncorhynchus gorbuscha
硬骨魚綱サケ科の魚。サケ属中もっとも分布が広く、産卵場の南限は朝鮮半島北部、北海道、カリフォルニア州のラシアン川、北は北極海のレナ川からマッケンジー川の間、千島列島やアリューシャン列島を含めて分布する。体の背面が鮮青色を帯びるのでアオマス、また産卵期の雄の背面が甚だしく隆起するのでセッパリマスともよばれる。英名はピンクサーモンで、これは肉色に由来する。卵巣は橙赤(とうせき)色である。夏から秋に遡上(そじょう)した親魚は川の中・下流、ときには河口部で産卵し、春に孵化(ふか)して浮上した稚魚はすぐ降海する。一冬を海で過ごし、春になると母川に向かうが、その途中急速に成長しつつ成熟を進める。かならず2年で生活史を終えるため、偶数年と奇数年級群の間に遺伝子の交換はなく、両者の豊度が異なる場合隔年の豊凶が生じる。カラフトマスは北洋漁業の対象魚としてだけでなく、春に日本海沿岸と三陸沿岸、北海道東岸沖を北上するものを対象にした沖合漁業も重要である。缶詰に適するが、塩蔵品にもされる。
[石田昭夫]