エジプトのテーベ近郊,ルクソル神殿より北東へ約3km,カルナックKarnakにあるイプト・イスウト(最も選ばれた場所)として知られる古代エジプト最大の神殿。中王朝期より(特に第18王朝初めより)2000年にもわたって,トトメス1世・2世・3世,ハトシェプスト,アメンヘテプ3世,ラメセス1世・2世・3世,プトレマイオス2世・3世,ティベリウスに至るまで,拡張,取壊し,修復を繰り返してきた。日乾煉瓦の周壁に囲まれた三つの神域に分けることができる。中央の最大で保存状態のよいアメン大神殿群とこれをはさんで北側にメントゥ神殿群,南側にアメンの配偶神ムートの神殿群がある。アメン大神殿境内には主神殿のほかにコンス神殿,オペト神殿,プタハ神殿,ラメセス3世神殿,トトメス3世祝祭殿,アメンヘテプ2世祝祭殿等があり,その大多柱室は壮大な規模によって有名である。建築様式や美術的な意味だけではなく,トトメス3世年代記,州名表,王名表等価値ある歴史的資料も数多く保存されている。これらの神殿群は運河によってナイル川と結ばれており,かつアメン神殿とムート神殿はアメンの聖獣羊頭のスフィンクス参道で,またルクソル神殿とは人頭のスフィンクス参道で結ばれていた。テーベに王都を持つファラオの出現により莫大な富がこれらの神殿に集中し,特に新王朝期におけるテーベ神殿群の力は絶大であり,ラメセス3世の寄進した所領についてみても全神殿のそれに対し約80%にも及んだことが知られている。
執筆者:中山 伸一
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…とくに新王国時代はイクナートンの宗教改革による一時的な打撃はうけても,大帝国の守護神として勢威は絶頂を極め,ヘリオポリスの太陽神ラーと習合してアメン・ラーAmen‐Raとよばれ,創造神,〈神々の王〉とされた。ムート女神を妻,月神コンスKhonsを子とするテーベの三柱神を形成,本山のカルナック神殿は中王国時代以降プトレマイオス朝にいたる歴代諸王の増改築によってエジプト最大の神殿となる。図像では2枚の羽根を頂く男性もしくは牡羊頭の人物として表現される。…
…その奥は聖所で,中央には前後に入口をもつ聖舟室と,最奥に神像を納めた厨子を安置する神室があり,聖舟室の左右には多くの小室がある。カルナックのコンス神殿(カルナック神殿)はこの典型的な実例である。カルナックの大神殿やルクソルの神殿のような巨大な神殿は,これらの基本的要素を繰り返し重複して建て増しされたものである。…
…
[古代エジプト]
古代エジプトの神殿は,正面に二つの塔の間に入口を開くピュロンpylōn(塔門)があり,その内に柱廊をめぐらした中庭,多柱室(ハイポスタイル・ホール)と呼ばれる列柱広間をへて,付属室をともなった聖所に達する。現存する典型的実例はカルナックにあるコンス神殿(カルナック神殿)であり,時代は下るが,エドフのホルス神殿やデンデラのハトホル神殿も保存の良好な実例である。一般にエジプトの大神殿は増改築をくりかえすごとに,上にのべた基本的要素が重複されて平面が複雑になり,カルナックのアモン大神殿には10基のピュロンが建てられている。…
※「カルナック神殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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