改訂新版 世界大百科事典 「カワガラス」の意味・わかりやすい解説
カワガラス (河烏)
dipper
スズメ目カワガラス科Cinclidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は全長15~20cm,くびと尾が短く,ずんぐりした体つきをしているが,脚は長くて強い。羽色は濃褐色か,濃褐色と白色で,雌雄同色である。山地の谷川に単独かつがいですみ,スズメ目の中では水中に潜って食物をとることに適応した唯一の鳥である。ヨーロッパ,アジア,北アメリカ,南アメリカにそれぞれ1種ずつが分布する。
カワガラスCinclus pallasiは全長約20cm,全身が濃褐色をしていて,谷川にすんでいるところからその名がついた。一年中テリトリーをもって生活し,ビッ,ビッと鳴きながら,流れに沿って水面を低く直線的に早く飛ぶ。渓流の石の上を歩いて食物をとることもあるが,ほとんどの食物は水中からとる。水かきはないが,強い脚で流れの中の水底を歩き,石の間から水生昆虫の幼虫をとったり,水中に飛び込み,翼をはばたいて水に潜り,小魚をくちばしでくわえとる。秋につがいになり,春早くから雄はチー,チー,ジョイ,ジョイなどと複雑なさえずりをする。2~6月に,滝の裏側,流れの中や岸にある岩陰の棚,橋の下などにコケ類を使って大きな球形の巣をつくり,1腹4~5個の卵を産む。ヒマラヤ山地以東の東アジアに分布し,日本では北海道から九州まで留島として分布している。ヨーロッパにはムナジロカワガラスC.cinclus,アラスカからパナマにかけアメリカカワガラスC.mexicanus,南アメリカにはシロガシラカワガラスC.leucocephalusが分布する。
執筆者:齋藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報