日本大百科全書(ニッポニカ) 「カントロビチ」の意味・わかりやすい解説
カントロビチ
かんとろびち
Леонид Витальевич Канторович/Leonid Vital'evich Kantorovich
(1912―1986)
ソ連の数学者、経済学者。ネムチノフ、ノボジーロフと並んで、ソ連数理経済学派の創始者の一人。サンクト・ペテルブルグに生まれ、1930年レニングラード大学(現サンクト・ペテルブルグ大学)物理・数学部数学科を卒業。1934年22歳にして同大学教授に抜擢(ばってき)される。学生時代にすでに射影集合論で国際的に知られ、1930年代後半には、半順序空間における関数解析で一派をなした。1939年に発表した『生産組織と生産計画の数学的方法』は、線形計画(リニア・プログラミング)法の先駆的業績として欧米でも評価され、1975年クープマンスとともにノーベル経済学賞を受けた。彼の「客観的評価」概念はシャドー・プライスshadow price(影の価格、潜在価格)と同一のもので、これにより部分的最適を全体的最適に結合する分権的管理の基礎理論を提供した。1964年にソ連科学アカデミー(現ロシア科学アカデミー)会員となった。
[望月喜市]
『望月喜市訳「生産組織と生産計画の数学的方法」(岡稔訳『マルクス経済学の数学的方法 下巻』所収・1961・青木書店)』▽『吉田靖彦訳『社会主義経済と資源配分』(1965・創文社)』