リアリズム法学(読み)りありずむほうがく(英語表記)realist jurisprudence

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リアリズム法学」の意味・わかりやすい解説

リアリズム法学
りありずむほうがく
realist jurisprudence

法を規範としてではなく、事実としてとらえようとする法学潮流をさす。

(1)ホームズパウンドなどの影響の下で、1930年代に登場したアメリカ法学の学派で、ネオリアリズムneo-realismともよばれる。その出発点となったジェローム・フランクの『法と現代精神』(1930)は、法的安定性を神話であるとし、法解釈の客観性やとくに裁判官の事実認定の客観性を批判した。この潮流に属するのは、サーマン・アーノルド、フレッド・ローデル、カール・ルウェリンKarl Nickerson Llewellyn(1893―1962)などである。

(2)スウェーデンウプサラ大学のアクセル・ヘーゲルストレームAxel Hägerström(1868―1939)を中心として、法の経験科学的理論を確立しようとした学派Scandinavian legal realismをさし、代表者はオリベクローナKarl Olivecrona(1897―1980)、ロスAlf Ross(1899―1978)などである。

長尾龍一

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リアリズム法学」の意味・わかりやすい解説

リアリズム法学
リアリズムほうがく
legal realism; realism in law

(1) 1920~30年代にアメリカで興った法学上の一傾向。ネオ・リアリズム法学または新実在主義法学現実主義法学とも呼ばれる。 J.フランク,K.ルウェリン,T.アーノルドなどがその代表者とされる。彼らの間に必ずしも全面的な方法論上の一致があるわけではないが,伝統的法学における観念的思考方法や形式論理的操作の偏重に反対し,法が実際に機能する裁判過程の経験的,事実的分析に考察主眼をおく点において共通するものをもつ。思想的にはプラグマティズムや行動主義心理学などの影響が強い。 (2) スウェーデンの法学者 A.ヘーゲルストレームを祖とし,K.オリベクローナ,A.ロスなどによって代表される北ヨーロッパのリアリズム法学,スカンジナビアン・リアリズムをさす。アメリカのネオ・リアリズム法学が裁判過程の実証的分析を主要課題とするのに対して,法学上の伝統的な諸概念の形而上学的,観念的な性格を批判し,それを経験的に再構成しようとするところに特色がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android