20世紀の初め、ヒルベルトは、積分方程式の研究からヒルベルト空間の概念をつくり、解析学を抽象化する道を開いた。さらに1920年代にバナッハが、解析学の位相・代数的な面に注目して確立したのが関数解析である。位相解析ともよばれる。関数解析は最近では偏微分方程式論、確率論、数値解析などでも重要な手法として用いられており、その関連においても盛んに研究されている。関数解析のおもな研究対象は、バナッハ空間と、その上の連続な線形作用素である。バナッハ空間は、線形空間に普通の絶対値の拡張であるノルムが定義され、そのノルムから導入された収束に関し完備になっている。関数解析はとくに次の点で重要である。
(1)バナッハ空間の完備性に基づく理論。これは解析学における多くの存在定理に統一的な理論を与える。
(2)バナッハ空間と、その共役空間との相対性、弱位相の導入。これは最近では超関数の理論でも重要な役割を果たしている。
(3)積分方程式論の抽象化として、とくに完全連続作用素の、行列の固有値問題の拡張としてのスペクトルの理論。
(4)熱伝導や波動方程式の解が半群をつくることはよく知られていたが、逆に半群の生成定理から、偏微分方程式の解の存在が示される。その中心にヒレ‐吉田の定理がある。半群の理論は非線形の作用素にも拡張されている。これは、高村幸男、加藤敏夫により始められた理論であり、非線形関数解析の研究の端緒となった。
[洲之内治男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…バナッハはヒルベルト空間の拡張であるバナッハ空間の線形作用素論を解析の諸問題に応用した。位相数学と代数学とを用いて解析学を研究する方法を,そのころ日本では〈位相解析〉と呼んだが,その後世界的に行われている用語に合わせて〈関数解析〉と呼ぶようになった。 1930年代からフランスの数学者グループであるブールバキが《数学原論》を著し始めた。…
※「関数解析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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