カウボーイ(読み)かうぼーい(英語表記)cowboy

翻訳|cowboy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カウボーイ」の意味・わかりやすい解説

カウボーイ
cowboy

おもにアメリカ合衆国西部で,馬上から牧牛を扱う技能をもつ牧夫ミシシッピ川以西で牧畜業に不可欠の働き手となり,アメリカの民間伝承においてその人物像は美化された。1820年頃,アメリカ人開拓者はテキサス牧場でバケーロ vaquero(スペイン語でカウボーイの意。英語ではバッカルーと発音される)に出会い,なかにはバケーロから投縄ラッソ),鞍,拍車,焼印などに関する技能を習得する者たちもいた。南北戦争終結後の 1865年以降,北部の諸都市で高い利益を生む牛肉市場が形成されると,多くのテキサス州民がウシの飼育に従事するようになった。牧畜業はグレートプレーンズを越えてカナダへ,また西のロッキー山脈へと広がった。一般的に約 2500頭のウシの群れにカウボーイ 8~12人が伴ってウシの世話をする。秋になると,共有の放牧地で持ち主のいないウシなども含めてウシを駆り集め,商標としての焼印がまだ押されていないウシには焼印を押し,冬の間はウシの群れを見守り,春になると市場に出せる状態のウシを選び,最寄りの鉄道駅がある町まで群れを移送した。その道程は数百kmに及ぶことが多かった。町でウシを東部の買い手に売り渡したカウボーイたちはつかの間の息抜きを楽しんだのち,帰途について次の 1年の営みを始めた。西部開拓による農地の拡大に伴って放牧地は農場へと転換されていった。牛追いたちも 1890年には鉄道の線路付近などで有刺鉄線に囲まれた牧場に定住することを強いられた。こうしてカウボーイは衰退したが,19世紀末から 20世紀にかけていわゆる三文小説などフィクションの世界において,独立独歩を貫く風格の備わった西部の寡黙なヒーローという人物像が定着し,映画やテレビドラマを通じて語り継がれている。(→ガウチョ西部物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウボーイ」の意味・わかりやすい解説

カウボーイ
かうぼーい
cowboy

アメリカ西部やカナダ、メキシコなどの牧場で働く牧夫のこと。カウは雌牛の意。もともとは、アメリカ独立戦争のときイギリスにくみした王党派のゲリラ隊の名称であった。16世紀なかば、アメリカのテキサスに初めて牛が家畜として登場し、のちに各地に広まった。これを飼育したり輸送したりする者をカウパンチャーcowpuncherまたはパンチャーpuncher(家畜の番人)とよんだが、のちカウボーイというようになり、19世紀に最盛期を迎えた。乗馬や投げ縄の得意な荒くれ男が多く、民謡や物語をはじめ、西部劇映画には欠かせない登場人物として、革のベストやテンガロン・ハットまたはカウボーイ・ハットとよばれるつば広の帽子など、独特の風俗で親しまれる。カウボーイのはくジーンズは実用的ではき心地がよいところから、現在若者や子供たちの日常着として世界的に流行している。なお南米草原地方のカウボーイは、ヨーロッパ人と原住民との混血が多く、ガウチョgauchoとよばれている。

[佐藤農人]

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