ガーター(読み)がーたー(英語表記)gāthā

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガーター」の意味・わかりやすい解説

ガーター(詩句)
がーたー
gāthā

パーリ語あるいはサンスクリット語で詩句のことを意味する。漢訳仏典では伽陀(かだ)、伽他(かた)と音写したり、頌(じゅ)、諷頌(ふじゅ)、詩歌経と訳出したり、また単に偈(げ)ともいわれる。広義には詩句一般をさす。たとえば、「パーリ五部」のもっとも素朴な経典集録であるとされる『相応部経典』中の「有偈品(うげぼん)」には、「すると世尊(せそん)は、その意味を知ってそのときこのような偈(ガーター)を誦(ず)したまう」とあるあとに、2行または4行の詩句をもって経典を結んでいるのが、しばしばある。また狭義には、九分教、十二分教の第四支をさす。ブッダゴーサ(仏音(ぶっとん))によると、「法句経(ダンマパダ)、長老偈(テーラガーター)、長老尼偈(テーリーガーター)および経集(スッタニパータ)中のスッタ(経)のない純粋な偈が、ガーターであると知るべきである」といわれている。いずれにせよ、ガーターとは、散文にはない表現上の特殊な約束ごと、すなわち規範を媒介として表現される詩句のことであり、この詩句の形式を論ずるのが詩律論である。パーリ語に関する伝統的詩律論書としては、サンガラッキタ作といわれる『ブットーダヤ』がある。なお近年、パーリ語の詩律に関する研究が活発で、パーリ聖典成立史の研究や本文批判のために重要視されている。

高橋 壯]

『前田惠學著『原始仏教聖典の成立史研究』(1964・山喜房仏書林)』『高橋壯「パーリ詩律論試稿」(『名城大学人文紀要』第31集所収・1984・名城大学一般教育人文研究会)』


ガーター(靴下留め)
がーたー
garter

靴下留め。膝下(ひざした)または太もも丈の靴下が、ずり落ちるのを防ぐために用いる。紐(ひも)状、輪状のものなどがある。ガーターの使用は、靴下の使用とともに始まった。男子は中世以来、ホーズhose(タイツ状のズボン)や短い丈のズボンを着用したので、靴下は表着の一部としてみられ、ガーターも装飾的要素の強いものであった。膝の外側リボンで結んだもの、テープ状のものをバックルで留めたもの、長い紐を交差させて結んだもの、レースの縁飾りを下げたものなど、はでなものが多かった。19世紀以降、長ズボンが一般的となり、ガーターが人目に触れることはなくなった。現代では、エラスティック糸を編み込んだ短靴下がはかれ、ガーターは用いられなくなった。

 女子のガーターは長いスカートの下に隠されていたが、レースや装飾的な留め金付きのものが多かった。19世紀中ごろより、インドゴムの導入で伸縮性のある輪状のものが多くなり、19世紀末期には、留め金をコルセット下端に取り付けたものや、靴下をつるサスペンダーが、ウエスト・ベルトに固定されたもの(ガーター・ベルト)が流行した。1960年代以降、パンティ・ストッキングの着用が一般的になるとともに、ガーターは下着の主流から遠ざかった。

[深井晃子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガーター」の意味・わかりやすい解説

ガーター
garter

靴下を留める用具。紐で結ぶもの,輪で留めるもの,上から吊ってクリップで留めるサスペンダー式のものがある。材質はゴムを織込んだ伸縮のきくものが多かったが,スパンデックス (弾性繊維) などの合成繊維や,パンティストッキングの普及につれて,次第に用いられなくなっている。靴下の使用とともに始り,17世紀の男子服にみられる膝下のリボン飾りもガーターの一種。

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