キマダラセセリ(その他表記)Potanthus flavum

改訂新版 世界大百科事典 「キマダラセセリ」の意味・わかりやすい解説

キマダラセセリ
Potanthus flavum

鱗翅目セセリチョウ科の昆虫。やや小型のセセリチョウで,開張2.3~3.2cm,翅は濃黄色と黒色のまだら模様がある。ミャンマー中国,アムール地方から日本にかけての東アジアに広く分布し,日本では北海道から本州,四国,九州を経て吐噶喇(とから)列島にかけて見られる。林内の空地や森林周辺の明るい草地に発生する。暖地では年2回,寒地では年1回発生し,6~7月ころ羽化する春型は,8~9月に羽化する夏型よりも大型である。寒地では7~8月ころ春型のみが羽化する。成虫は草本の葉上に後翅を水平に開き,前翅を半ば開いてよくとまり,オカトラノオ,ノアザミなどの花に好んで集まる。雌は幼虫の食草のススキチガヤツルヨシなどのイネ科植物の葉に産卵する。幼虫は食草の葉を裏側から巻いて細長い巣をつくり,その中に潜み,ここから出て周囲の葉を食べる。成熟した幼虫は巣の両端を閉じ,巣の下端の中肋にかみ傷をつけて巣をぶら下げ,その中でさなぎとなる。中齢幼虫のまま両端を閉じた袋状の巣の中で越冬する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キマダラセセリ」の意味・わかりやすい解説

キマダラセセリ
きまだらせせり / 黄斑挵蝶
[学] Potanthus flavum

昆虫綱鱗翅(りんし)目セセリチョウ科に属するチョウ。北海道から九州にかけて分布するが、寒冷地では一般にその数が少ない。吐噶喇(とから)列島中之島が日本における既知分布の南限。外国では朝鮮半島、ロシア連邦の沿海州、中国に分布する。はねの開張30ミリメートル内外。はねの形は雌雄によって異なり、雌は前ばねが丸いが、色彩や斑紋(はんもん)は雌雄ほぼ同様で、黒と黄のまだら模様をもつ。寒冷地では年1回の発生(7、8月)、暖地では年2回の発生(春型6、7月、夏型8、9月)、この場合には夏型は春型に比べて目だって小さい。幼虫の食草はエノコログサ、ススキ、メヒシバ、オヒシバチヂミザサジュズダマなどのイネ科の雑草であるが、ときに各種のササ類にもつき、幼虫はこれらの植物の葉を巻いて巣をつくり、その中に潜んでいる。越冬態は幼虫である。

[白水 隆]


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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「キマダラセセリ」の解説

キマダラセセリ
学名:Potanthus flavum

種名 / キマダラセセリ
目名科名 / チョウ目|セセリチョウ科
解説 / 速く飛び、アザミの花などによくとまります。
体の大きさ / (前ばねの長さ)12~15mm
分布 / 北海道中部~九州、トカラ列島の中之島
成虫出現期 / 関東地方では6~9月に2回発生
幼虫の食べ物 / ススキなど

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百科事典マイペディア 「キマダラセセリ」の意味・わかりやすい解説

キマダラセセリ

鱗翅(りんし)目セセリチョウ科の1種。開張は春型30mm内外。夏型は少し小さい。黒地にだいだい色の斑紋がある。暖地に多く,日本全土,朝鮮,中国,台湾に分布。幼虫はササ,タケなどの葉を食べ,成虫は年2〜3回発生する。

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