ジュズダマ(読み)じゅずだま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ
じゅずだま / 数珠玉
[学] Coix lacryma-jobi L.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は株立ちし、高さ約1メートル。葉は幅5センチメートル、長さ50センチメートル。雌雄同株。7~10月、稈の上方の短い分枝から総状花序をつける。包鞘(ほうしょう)は卵球形で長さ約1センチメートル、灰白色で光沢がある。雌小穂はこの堅い包鞘に包まれ、外からは見えない。雄花序は総状で包鞘の先端から出る。両小穂ともに2個の小花がある。インドシナ半島、インドネシア原産で、栽培され、野生化している所もある。包鞘は穎果(えいか)を内蔵するほか、中央に雄花序を通す芯(しん)があり、紐(ひも)を通して連ねるのに便利であるため、数珠(じゅず)や首飾りに利用する。包鞘が濃褐色で、爪(つめ)で割れる堅さのものが変種ハトムギで、穎果は健康食品や漢方薬とする。

[許 建 昌 2019年8月20日]

文化史

有史以前から利用され、柳田国男(やなぎたくにお)は『人とズズダマ』(1952)で、その語源と由来を論じた。柳田は、ジュズダマの名は仏教の数珠に基づくのではなく、珠(たま)や粒と関連する古語のツスやツシタマから、現代も方言に残るズズダマを経て、ジュズダマになったと推察した。『延喜式(えんぎしき)』(927)には薬物として載る。中国雲南省の南部からインド北部にかけてが変異中心とみられる。アフリカではヒョウタン外側に、多数紐(ひも)で通して、ぶら下げ、音をたてる楽器がある。英名はヨブの涙Job's-tearsという。

[湯浅浩史 2019年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ(数珠玉)
ジュズダマ
Coix lacryma-jobi

イネ科の大型の多年草。トウムギともいう。アジアの熱帯の原産で,古く日本へ渡来した。現在各地で栽培され,あるいは田や池などの水辺に自生している。高さ1~1.5mに達し,茎は直立して分枝する。葉は互生し,幅 2cmあまりの披針形で先端は長く伸びる。葉の基部は鞘となり茎を包む。初秋に,葉腋から長さのふぞろいな柄をもった穂状花序を数個出す。雌花の穂は短く,雄花の穂は雌花穂の上方に伸びる。果実は卵形で初め緑色,のち黒色に変り,熟すると灰白色となる。光沢があり硬い。消炎,鎮痛あるいは皮膚の荒れを取るために薬用とされ,また強壮剤としても用いられる。変種のハトムギ C. lacryma-jobi var. ma-yuenは一年生で宿根がなく,実は楕円形で嘴状の突起があり,結実時に果序全体がやや垂れる傾向がある。薬用としては,このほうが賞用される。

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