ジュズダマ(その他表記)Job's tear
Coix lacryma-jobi L.

改訂新版 世界大百科事典 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ
Job's tear
Coix lacryma-jobi L.

東南アジア原産の大型のイネ科の草本。その光沢のある実で数珠を作るから数珠玉の名がある。熱帯では数年生きるが,温帯では一年草。太く中実の茎は株立ちとなり,高さは1mに達し,約10節あり,枝分れする。葉は幅広い線形で,トウモロコシの葉に似て小型で,長さ20~60cm,幅は3cm前後で,濃い緑色をしている。夏から秋にかけて,茎の上部の葉腋ようえき)に枝分れした長短不同の花序を束生する。普通,実といっている硬い壺状の器官は苞で,その中に雌性の小穂3個があり,白い柱頭だけを壺形の苞の外に抽出する。雄性の小穂は壺形の花から伸びでた柄の先に単生した総となり,粉白色を帯びた緑色で2~3個集まり,2個の小花がある。果実のつくときには壺形の苞は硬い殻となり,長さは9mmくらいで,先端はくちばし状となり,全体に光沢がでた褐色または灰色で美しい。中に楕円形の本当の果実が入っている。日本では栽培され,それが逸出して野生化したものもある。中国以南には野生のものが見られる。硬く美しい壺状の実を細工物に使うほか,川殻(せんこく)という名で漢方薬に用い,強壮剤,利尿剤とする。また根は民間薬として神経痛などに有効という。果実にはデンプン脂肪があって食用にできないことはないが,食用作物飼料となるものはジュズダマの栽培変種ハトムギである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ
じゅずだま / 数珠玉
[学] Coix lacryma-jobi L.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は株立ちし、高さ約1メートル。葉は幅5センチメートル、長さ50センチメートル。雌雄同株。7~10月、稈の上方の短い分枝から総状花序をつける。包鞘(ほうしょう)は卵球形で長さ約1センチメートル、灰白色で光沢がある。雌小穂はこの堅い包鞘に包まれ、外からは見えない。雄花序は総状で包鞘の先端から出る。両小穂ともに2個の小花がある。インドシナ半島、インドネシア原産で、栽培され、野生化している所もある。包鞘は穎果(えいか)を内蔵するほか、中央に雄花序を通す芯(しん)があり、紐(ひも)を通して連ねるのに便利であるため、数珠(じゅず)や首飾りに利用する。包鞘が濃褐色で、爪(つめ)で割れる堅さのものが変種のハトムギで、穎果は健康食品や漢方薬とする。

[許 建 昌 2019年8月20日]

文化史

有史以前から利用され、柳田国男(やなぎたくにお)は『人とズズダマ』(1952)で、その語源と由来を論じた。柳田は、ジュズダマの名は仏教の数珠に基づくのではなく、珠(たま)や粒と関連する古語のツスやツシタマから、現代も方言に残るズズダマを経て、ジュズダマになったと推察した。『延喜式(えんぎしき)』(927)には薬物として載る。中国雲南省の南部からインド北部にかけてが変異の中心とみられる。アフリカではヒョウタンの外側に、多数紐(ひも)で通して、ぶら下げ、音をたてる楽器がある。英名はヨブの涙Job's-tearsという。

[湯浅浩史 2019年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ(数珠玉)
ジュズダマ
Coix lacryma-jobi

イネ科の大型の多年草。トウムギともいう。アジアの熱帯の原産で,古く日本へ渡来した。現在各地で栽培され,あるいは田や池などの水辺に自生している。高さ1~1.5mに達し,茎は直立して分枝する。葉は互生し,幅 2cmあまりの披針形で先端は長く伸びる。葉の基部は鞘となり茎を包む。初秋に,葉腋から長さのふぞろいな柄をもった穂状花序を数個出す。雌花の穂は短く,雄花の穂は雌花穂の上方に伸びる。果実は卵形で初め緑色,のち黒色に変り,熟すると灰白色となる。光沢があり硬い。消炎,鎮痛あるいは皮膚の荒れを取るために薬用とされ,また強壮剤としても用いられる。変種のハトムギ C. lacryma-jobi var. ma-yuenは一年生で宿根がなく,実は楕円形で嘴状の突起があり,結実時に果序全体がやや垂れる傾向がある。薬用としては,このほうが賞用される。

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百科事典マイペディア 「ジュズダマ」の意味・わかりやすい解説

ジュズダマ

熱帯アジア原産のイネ科の大型多年草。日本各地の路傍や小川のふちにはえ,温帯では一年草。茎は太く柔らかく,高さ80〜100cmになり,葉は広線形で柔らかい。花序は茎の上部の葉腋につき,小穂には雌雄の別がある。雌性小穂は堅い壺形の包鞘(ほうしょう)の内に,雄性小穂はその包鞘の口から突き出した柄の上につく。秋に開花。果実のように見えるのは堅くなった包鞘で,先端がくちばし状,全体は褐色〜灰色で光沢がある。果実(包鞘)を数珠(じゅず)のようにつないで遊ぶ。変種のハトムギはインドシナ原産の一年生の薬用植物で,包鞘は堅くない。果実は【よく】苡仁(よくいにん)といい,利尿・鎮痛剤とし,また飯にたき込んだり,ハトムギ茶にする。

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