デジタル大辞泉
「ささ」の意味・読み・例文・類語
ささ[副]
[副]《「さざ」とも》
1 水が勢いよく流れたり注ぎかかったりするさま。
「あがきの水、前板まで―とかかりけるを」〈徒然・一一四〉
2 風が吹くさま。
「扇をひろげて、殿上を―とあふぎ散らして」〈盛衰記・三〉
3 動きの速いさま。
「人々の―と走れば」〈大鏡・道長下〉
4 大勢の人々が口々に物をいってさわがしいさま。また、一時に笑うさま。
「聴聞衆ども、―と笑ひてまかりにき」〈大鏡・道長下〉
ささ[感]
[感]
1 人を促すときなどに発する語。さあさあ。「ささ、どうぞおさきに」
2 歌謡で用いる囃子詞。
「残さず飲せ―」〈神功紀・歌謡〉
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ささ
- 〘 感動詞 〙
- ① はやしことば。
- [初出の実例]「この御酒(みき)は 我が御酒ならず〈略〉豊寿(ほ)き 寿き廻(もとほ)し 奉(まつ)り来し御酒そ 残(あ)さず飲(を)せ 佐佐(ササ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- ② 人に物事を勧めたり誘ったりする時に発する語。さあさあ。
- [初出の実例]「ササいはんすなそこぢゃて。そりゃ立入ぢゃないとっとの横入ぢゃ」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
ささの補助注記
①の挙例の「古事記‐中・歌謡」の用例は酒楽の歌であり、酒の意のササとの関係も類推される。ただし、酒を表わすササの確例は、近世初頭までくだる。
ささ
- 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる )
- ① 風が吹く音などを表わす語。さっさっ。〔名語記(1275)〕
- ② 水などが勢いよく流れたり、そそぎかかったりするさまを表わす語。〔名語記(1275)〕
ささ
- 〘 名詞 〙 植物「ささげ(豇豆)」をいう女房詞。〔大上臈御名之事(16C前か)〕
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ササ (笹)
イネ科の多年生植物。タケ科に分けることもある。タケもササも地下茎によって無性繁殖し,まれに花が咲くが花弁はなくよく似ているので,大型のものをタケ,小型のものをササと一般に呼ぶならわしとなっている。タケはたけのこの皮が脱落するが,ササはいつまでも残る。稈(かん)は低く多くは2m以下,節から出る枝も少数で,それに比較的大型の葉をつける。植物学的にはササ属Sasaのほかに,カンチク属Chimonobambusa,メダケ属Pleioblastus,ヤダケ属Pseudosasa,スズダケ属Sasamorpha,アズマザサ属Arundinariaなどの数属を含み,常緑であるが,種によっては葉の周辺部が冬には白色となって隈の入るものや,大部分の葉を落とすものもある。
ササは熱帯にはほとんど見られず,東アジアの暖帯以北,むしろ温帯や亜寒帯に多く分布している。とくに日本列島では,関東以西の低地から低山地に多いネザサやヤダケから,ブナ帯のスズダケ類(太平洋側)やネマガリダケ類(日本海側),ミヤコザサ(内陸山地域)などが多くの種を分化させているだけでなく,林床の主要な構成種にもなり,ときには広大なササ原を形成する。このように日本はとびぬけてササの種類が多いが,開花が数十年に1度以下なので,分類の特徴形質がはっきりつかみにくく,そのため研究者によっては数百種を区別する人から数十種ほどしか認めない人まであり,分類はまだ完全ではない。ことに葉の形や稈の高さなどは立地によって,あるいは栽培の仕立て方によって著しく変わる。
ササは昔から葉は薬用,保健用に,稈はいろいろな用途に利用され,現在でも工芸品や建築,その他の素材として利用される。また,広く分布するネマガリダケなど大型のササは,パルプ資源として期待されている。ササのたけのこは小型であるが,ネガマリダケなどは食用として重要で,スズコの名で広く利用されている。ササの芯葉にはビタミンKが多く含まれ,青葉には抗菌防腐作用があるので,乾燥してササ茶をつくったり,チマキや富山の鱒ずしのように食品の包装にもよく利用される。地下茎は土中を密にひろがり,表土の流出や崖崩れを防ぐ。この地下茎の延長とササの稈の本数は種類,土質によって違うが,たとえば面積100m2あたり,大型のネマガリダケの密生地では800~900m,1200~2000本に,小型のクマザサの密生地では1100m前後,1500~5000本に及ぶ。ブナ林の林床に密生するササを牧草として利用する試みはなん度も行われたが,商業的な高密度の放牧を長年月続けるには生育量不足で,成功していない。しかし,高密度に生育するササは,樹木の幼樹の生長を阻害するだけでなく,他種の草本の侵入生育をほとんど許さない場合がある。ササ類は小型で刈込みにも耐え,常緑性で,クマザサのように冬にも美しく隈どる種類や,斑入り葉(ふいりば)の変りものもあり,庭園の地被(グランドカバー)植物として重要である。また垣根にも植込みにも広く利用されている。
移植のときは若ザサ数本を1株として掘りとる。移植の適期は暖帯では秋,寒地では春。生垣とするには,新梢の伸びきったころに,適当な高さに先端を切りそろえる。盆栽とするには,若ザサに地下茎をつけ,鉢の土はふつう腐葉土,赤土,小砂を4:4:2の割合に混ぜた培養土を用いる。ササが伸びすぎるときは,先を切らずに,先端の新梢を手でひきぬく。古いササを切ると若いササが生えやすい。
→タケ
執筆者:上田 弘一郎
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ササ
ささ / 笹
bamboo grass
イネ科(APG分類:イネ科)のタケ・ササ類。タケとの間にははっきりした区別はないが、一般に丈が低く、茎が細いものを総称していう。昔は利用面から材(稈(かん))を利用するものがタケ、葉を利用するものがササとされた。いまはタケノコから成竹になるとき、竹の皮が落ちるものをタケ類、いつまでもついているものをササ類と便宜上区別している。植物学的にはササ類にササ属、スズタケ属、ヤダケ属、アズマザサ属、メダケ属、カンチク属がある。このうちササ属は日本が分布の中心をなし、全国に種類、量ともに多い。日本以外では、樺太(からふと)(サハリン)、千島それぞれの南半部、および朝鮮半島に産するだけである。代表的な種類はチシマザサ、クマザサ、チマキザサ、ミヤコザサなどで、稈の基部が斜上し、一つの節から1本の枝が出る。葉鞘(ようしょう)の上縁部にある肩毛(けんもう)はざらつき、花には雄しべが6本ある。
葉は防腐作用があり、ちまきをはじめ、菓子などを包み、生魚の贈り物には古来の習わしとしてササの葉が添えられ、また漢方薬の原料や家畜の飼料ともなる。稈は筆軸、竹細工、製紙原料となる。このほか、よく観賞用としたり、傾斜地の土止めに植えられる。また紋様として家紋にも用いられる。ササ群落は植林のじゃまになり、また開花結実のときは野ネズミが増えるとして林業家から嫌われることもあるが、昔、ササの実は凶作の際の食料として役だったこともある。ササの名は、風に吹かれて葉と葉が擦れ、ササ、ササと音を発することからおこったという説と、ササダケ(細小竹)の下略であるという説がある。
[鈴木貞雄 2019年8月20日]
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ササ(笹)【ササ】
一般にタケの小型の種類の総称であるが,明確な区別はない。茎を利用するものをタケ,葉を利用するものをササといったといわれる。植物学的には,タケはたけのこの皮(稈鞘)が生長につれて落ちるものをいい,ササは皮が残っていつまでも茎についているものをいう(この区別だと小型なオカメザサがタケとなり,丈の高いメダケやヤダケがササとなる)。ササ類は日本に種類が多いが,開花がふつう数十年に一度なので,分類はまだ不完全である。たけのこが美味のチシマザサのほか,葉で食物などを包んだり(チマキザサ),観賞用(クマザサ)とされる。笹と竹は松,梅とともに瑞祥として紋章に使用。
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ササ(笹)
ササ
Sasa; bamboo grass
イネ科の植物で,木質化した長い稈をもつ。日本を中心に朝鮮半島,サハリン,千島列島に分布する。タケ類と合せて,いわゆるタケ・ササ類とされるが,そのなかでのタケとササの区別は明瞭ではない。根茎は地下を長くはい,稈をまばらに生じる。稈は根茎から直立し,中空の円筒形で節があり高さ 2mほどのものが多い。枝は1つの節から1本ずつ伸びるが,枝を出さないもの (ミヤコザサ) もある。葉は広披針形ないし長楕円形で大きく,平行脈が走り縁には毛があり,稈の先端部に数枚が互生する。葉の基部は鞘に関節し落葉後も鞘は残る。花はまれに咲くものが多く,結実後株全体が枯れるのが普通である。花序は稈の下方および上方より生じ,円錐状で数個から十数個の花を疎生する。大きな群落をつくることが多い。多数の種が知られているが,おもな種として,クマザサ,アズマザサ,チマキザサ,ヤダケ,スズタケなどがある。
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普及版 字通
「ささ」の読み・字形・画数・意味
【】ささ
【槎】ささ
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
ささ
岡山県、真備竹林麦酒醸造所が製造する地ビール。ペールエール。
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世界大百科事典(旧版)内のささの言及
【搔敷】より
…おもに植物の葉が使われ,とくに檜葉(ひば)やナンテンが多用されたが,まれには羽改敷(はがいしき)といって鳥の羽を切ってひろげ,その上に檜葉を置くというようなものもあった。現在では紙も使われ,またササの葉の利用が多いが,《貞丈雑記》は,ササの葉を搔敷にするのは切腹のときだから,忌むべきものだといっている。【鈴木 晋一】。…
【タケ(竹)】より
…タケ類は,約30属500~1000種以上を含む大きな植物群の一つである。
[タケとササ]
日本では一般に,大型のものがタケで小型のものが[ササ]という類別概念が通用している。常識的にはこの区分でよいが,竹の皮(稈鞘)が稈の完成後に落ちるのをタケとし,永くついているのをササとして両者を区別することもできる。…
※「ささ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」