共同通信ニュース用語解説 「キリスト教福音派」の解説
キリスト教福音派
キリスト教のプロテスタントから派生し、聖書の文言を原理主義的に解釈する。英語では「エバンジェリカル」。神はアダムをつくり、妻イブをアダムの
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キリスト教のプロテスタントから派生し、聖書の文言を原理主義的に解釈する。英語では「エバンジェリカル」。神はアダムをつくり、妻イブをアダムの
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キリスト教の一派であり、聖書の一字一句をそのまま信じる福音主義(キリストの教えをもっとも重視すること、evangelicalism)に基づく信仰生活をしている人々。とくにアメリカで大きな勢力を占め、各種世論調査ではアメリカ国民の20~25%は福音派であるとされる。
アメリカ中西部から南部にかけて福音派が多く居住することから、その地域は「バイブル・ベルト(聖書地帯)」とよばれている。プロテスタントに多いが、カトリックのなかにも福音派は存在する。
キリスト教保守派(宗教保守)ということばと福音派はほぼ同義に使われることも多い。「宗教保守」ということばが示すように、福音派の特徴は、熱心な政治活動である。キリスト教の伝統的な価値観に基づく「社会保守」の立場から、妊娠中絶や同性婚、教育現場への進化論導入などに強く反対してきた。福音派にとって新約聖書だけでなく旧約聖書も聖典であり、ユダヤ教が旧約聖書をよりどころとしているため、外交政策ではユダヤ人がつくった国家・イスラエルを強く支持してきた。
近年は大統領選挙などでの積極的な動員から福音派の政治的な影響力はアメリカ国内だけでなく、世界的に注目されるようになっている。
福音派が政治に強い関心をもち始めたのは、全米規模での人工妊娠中絶を認めた1973年の連邦最高裁判所の「ロウ対ウェード判決」以降である。この判決以前は中絶に対する規制は州ごとに決められていたため、福音派が多い中西部や南部の州では中絶を禁止する州も少なくなかった。この判決以降、妊娠中絶規制を訴えた共和党の政治家たちが接近したこともあり、福音派は政治化していく。同時に「すべての子どもは神が祝福して生まれてくる」という立場から、妊娠中絶に強く反対する「プロライフpro-life(妊娠中絶禁止)」派の運動が福音派によって広がっていく。
1980年の大統領選挙で福音派がこぞって支持したレーガンが当選したことで、福音派の政治的な影響力が広く知られるようになった。その後も福音派は共和党の政治家たちの支持母体になり、妊娠中絶規制を訴え続けていく。レーガン以降、共和党から大統領になったブッシュ父子、トランプはいずれも保守派の判事を連邦最高裁判所や連邦控訴裁判所、連邦地方裁判所に任命していったため、連邦政府の権限を抑制し、州の権限を重視するほか、法の解釈を限定的に行う司法の保守化が進んでいった。福音派にとっては、州の権限強化や、中絶を認めた根拠となる憲法修正第14条の「法の下の平等」の解釈を限定的にすることは、歓迎すべき動きであった。
ちょうどトランプ政権の任期、1期4年間のなかで連邦最高裁判所の判事が3人交替するタイミングとなり、トランプ政権の最後には連邦最高裁判所の判事は保守派6人、リベラル派3人となった。その結果、2022年6月の連邦最高裁判決(ドブス判決)で、49年ぶりに「ロウ対ウェード判決」は覆され、中絶に対する規制は州ごとに決められるようになり、福音派は長年の悲願を達成した。その一方で、この最高裁の判断に妊娠中絶容認(プロチョイスpro-choice)派は強い反発を示している。
[前嶋和弘 2023年2月16日]
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