きんとん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「きんとん」の意味・わかりやすい解説

きんとん

甘煮したものに衣をかけた料理をいい、橘飩、金団、金糖、金唐などの文字が使われている。寛永(かんえい)20年(1643)版の『料理物語』のなかでのきんとんは、葛粉(くずこ)をこねてみそ汁に入れたものとしている。名は、色彩黄金色であることからついたものと思われる。きんとんには大別して豆きんとんと栗(くり)きんとんがある。豆きんとんにはインゲンマメを使う場合が多い。豆は一晩水に浸しておいてゆでるが、ときおり水を加えることをしわのばしという。すこし柔らかくなったところでゆで湯を捨て、新しい水を注いでさらにゆでる。十分ゆだったところで豆の3分の1を鍋(なべ)に残し、3分の2は水に入れる。鍋の豆はさらに煮て柔らかくしてからすり鉢にとってすり、水嚢(すいのう)に入れて水を漉(こ)し、さらに漉し袋に入れて水分を除く。それから、水につけてある豆を鍋に移し、水を加え、砂糖、塩で調味してとろ火で煮る。しばらくして、漉してある豆餡(まめあん)を加え、静かにかき混ぜながら煮上げる。分量の標準は、豆カップ5杯に対して砂糖500グラム、塩大さじ半分くらい。

 栗きんとんの作り方は、クリの鬼皮と渋皮をきれいに除き、みょうばん水に1時間ぐらいつけて、そのまま火にかける。沸き上がったら火を弱くして、4~5分後に水をさして冷やしながら水をきれいにかえ、火にかけて沸騰したら火を弱め、5分間ゆでたらまた冷やしながら湯を取り替える。冷やしてまたゆでるのは、クリを割らないためである。こうしてゆでたクリは鍋に入れ、ひたひたに水を加え、砂糖と塩で味を整える。サツマイモを適当に切り、割れるくらいに柔らかくゆでて裏漉しをしたものを衣としてクリの入った鍋に加え、静かに煮込む。クチナシの実の汁を加えると色がきれいに仕上がる。クリを煮るのには土鍋がよい。きんとんの衣にはサツマイモのほかにナガイモ、共衣(ともごろも)(栗、豆など材料をつぶして使う)を用いる。きんとんの材料には、このほか豆類、百合根(ゆりね)、ぎんなんなどが使われる。料理のきんとんは甘いばかりでなく、塩味をきかせなければいけない。きんとんは正月料理に欠かせない。

[多田鉄之助]

 菓子のきんとんは天保(てんぽう)年間(1830~44)ごろまではだんご餅(もち)で砂糖をくるみ、餅の表面にきな粉やごまをまぶしたもので、きんとん餅と称した。各種の餡(あん)や求肥(ぎゅうひ)を芯(しん)にして、そのうえに裏漉しにしたそぼろ餡をかけるいまのようなきんとんがつくられたのは、それ以降である。いわゆる上菓子であり、そぼろ餡、芯の餡の素材や色の取り合わせにも、四季おりおりの風趣が盛り込まれている。

[沢 史生]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「きんとん」の意味・わかりやすい解説

きんとん

くり,隠元豆,くわいなどを甘く煮て,あんの中に練り込んだもの。主として正月料理の口取りとしてつくられる。くりきんとん,豆きんとんが最もよくつくられる。あんはさつまいもや白隠元を使うことが多い。作り方のこつは材料によって異なるが,砂糖を水に溶かしてからあんの材料を入れ,練り上げること,あくを出さないようにすることなどである。色を黄色くするためにくちなしの実を用いる。

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普及版 字通 「きんとん」の読み・字形・画数・意味

【金】きんとん

仙道でいう隠身の術。

字通「金」の項目を見る

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