口取り肴(ざかな)の略。饗宴(きょうえん)の前に座付き吸い物が出るが、それといっしょに出す皿盛りの酒の肴。古くは昆布、かちぐり、のしあわびの類の盛り物であったが、いまではかまぼこ、きんとん、卵焼きに季節の鳥類、魚、野菜などを甘く煮て盛り合わせる。3品、5品、7品と奇数にするのを原則としている。古くは広蓋(ひろぶた)に盛り込み、硯蓋(すずりぶた)に取り分けてのせて出していたが、明治中期以降は広蓋を使用しなくなり、かわりに大皿に盛り込んで出すようになった。茶式では、まんじゅう、羊かん、蒸し物に添えて出す煮しめ物を口取りといっている。別に口取りということばは、簡単な料理の意にも用いることがあった。岐阜県飛騨(ひだ)高山では簡易食堂(御支度所(おしたくじょ)とよぶ)で出す簡単な料理をこうよんでいる。関東では口取りをその席では食べずに折りに詰めて持ち帰る習わしであった。いまはこの種の簡単な料理をその席で食べるので、口代わりという。口取り肴の代用の意である。
[多田鉄之助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報