日本大百科全書(ニッポニカ) 「籃胎漆器」の意味・わかりやすい解説
籃胎漆器
らんたいしっき
漆加飾技法の一種。籠地(かごじ)ともいう。表皮をとってから薄く裂いた竹幹や、つる植物などを編んでつくった器形を籃胎というが、それに漆を塗ったもの。特殊なものに一定幅の竹ひごを巻き上げたり、同心円状に輪(わ)積みしたものもある。その歴史は古く、朝鮮半島の平壌近郊、楽浪古墳群の彩篋(さいきょう)塚出土の人物画像漆彩篋はメダケを細く割ってつくった後漢(ごかん)(1~3世紀)時代のものである。日本の縄文晩期の是川(これかわ)遺跡や亀ヶ岡遺跡からの出土品には、竹ひごを編んだ籠地のほか、アケビやマフジのつるを用いたものもある。正倉院の漆胡瓶(ぬりのこへい)は巻き上げか輪積みの胎地という説がある。タイやビルマ(現ミャンマー)で蒟醤(きんま)として盛行したが、それが近世に渡来して、とくに茶人に好まれ、茶道具に使用された。江戸末期、高松藩の玉楮象谷(たまかじぞうこく)はその影響を受けて数々の名品を残し、高松塗として現在にその技術を継承している。明治以降、久留米(くるめ)をはじめ、それを模倣した別府などでも生産している。
[郷家忠臣]