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イタリアの古都フィレンツェにある美術館。ルネサンス絵画の代表的名作を数多く収蔵する。トスカナ大公コシモ1世の治下、フィレンツェの諸官庁(イタリア語でウフィツィ)を統合するために建てられたもので、設計はジョルジョ・バザーリ、1560年に着工し、84年に完成した。後期ルネサンスを代表する宮殿建築で、コの字形をなし、公の住居とされた旧政庁パラッツォ・ベッキオとは渡り廊下でつながる。しかし、当初の予定は変更され、分散していたメディチ家代々の美術品を再収集・保存することになり、以後各時代に傑作が加えられた。これらはメディチ家最後の相続者より、一般に公開することを条件に、1737年トスカナ大公国に寄贈された。1861年イタリア統一王国成立後は国家管理となり古代美術や彫刻は国立考古博物館、バルジェッロ美術館などに移された。現在は古文書と素描がそれぞれ1、2階に集められ、3階にはタペストリーや古代彫刻あるいはその模作に飾られた長いギャラリーがあり、それを取り囲む45の部屋にルネサンスの名画が展示されている。チマブーエ、ドゥッチョ、ジョットらの『聖母子』、シモーネ・マルティーニの『受胎告知』、ボッティチェッリの『春』『ビーナスの誕生』、そしてレオナルド・ダ・ビンチ、ティツィアーノと続く作品は、絢爛(けんらん)と花開いたルネサンス文化の息吹をいまに伝えている。なお、この美術館のあるフィレンツェの歴史地区は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[湊 典子]
イタリアのフィレンツェにある美術館。建物はメディチ家のコジモ1世がトスカナ大公国の主要な13の政庁を統合する庁舎の目的で1560年にバザーリに命じて着工させたもので,アルノ川を越えてパラッツォ・ピッティに至る歩廊も加えて,80年に建築家で彫刻家のブオンタレンティBernardo Buontalenti(1536-1608)らが完成。翌年にフランチェスコ1世は,それまでにメディチ家が収集した美術品を展示するために,3階建ての最上階を美術館にした。現在の収蔵品はメディチ家のコレクションを中心に,19世紀から20世紀にかけて諸教会やアカデミア美術館より移管された絵画,購入および寄贈作品などからなり,後期ゴシックからルネサンスを経てマニエリスム,バロックに至るフィレンツェ派絵画の展開を余すところなく伝える。他にベネチア派,ドイツ,オランダ,フランスの絵画,タピスリー,著名な画家たちの自画像も展示されている。2階は10万点を超す作品を収納する版画素描室となっている。
執筆者:生田 圓
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