改訂新版 世界大百科事典 「ギョウギシバ」の意味・わかりやすい解説
ギョウギシバ
Bermuda grass
Bahama grass
Cynodon dactylon(L.)Pers.
バミューダグラスの名でも知られるイネ科の草本。主として海辺近くの日当りのよい道端や荒地に生える多年草で,細長く硬い茎は枝分れしながら地面を横にはい,一部は地中に入って地下茎状にもなり,先端に葉をつけ,節からは花序をつける枝を立てる。花序をつける枝は高さ10~20cmで,少数の葉をつける。葉は細く短い線形で,先はとがり,淡緑色で,長さは6cm前後,幅は3mmくらいである。夏から初秋に開花する。花序は掌状に並んだ2~7個の細い枝をもち,灰色っぽい緑紫色である。小穂は各枝の片側に2列に密生し,長さ2~3mm,1小花があり,芒(のぎ)はない。全世界の熱帯から暖帯に分布し,日本全土に見られるが,原産地はゲノム構成から,インド・マレーシア地域と考えられる。
ギョウギシバの生育の最適年平均温度は24℃で,乾燥に強いが適当な水分がある土地で葉がよく茂る。そのため温暖地の砂質地で速くよく生長し,熱帯では周年生育するので,アメリカ南部では最も主要な多年生の牧草である。主要品種にコースタルバミューダグラスなどがある。1ha当り収量は,2回刈りで6.5t,最高13.5tほどもある。春,15℃以上になってから種子をまくか,匍匐(ほふく)茎を短く切ってばらまけば根づいて繁殖する。クリムソンクローバーなどとの混播(こんぱん)もおこなわれる。温帯~熱帯では繁殖力が強く,逸出すると駆除するのが困難な雑草にもなる。熱帯域では芝草として広く使われ,アメリカ合衆国南部では南アメリカやアフリカのC.transvaalensis(英名Burtt-Davy)とともに芝草にも用いられる。また道路わきの草地の砂防用や海岸埋立地の緑化用にも使われ,民間薬として全草や茎を各地で用いている。なお,インドではこれをダーバdarbháと呼び,《リグ・ベーダ》にも,供犠に用いられる聖なる草と述べられている。
執筆者:小山 鐵夫+星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報