改訂新版 世界大百科事典 「クアジモド」の意味・わかりやすい解説
クアジモド
Salvatore Quasimodo
生没年:1901-68
イタリアの詩人。シチリアのモディカに鉄道員の子として生まれる。ローマ大学工学部を経済的理由から中退し,土木技術院に勤めてイタリア各地を転々とする。フィレンツェの《ソラーリア》誌の同人となり,処女詩集《水と土》(1930),つづいて《沈んだ木笛》(1932)を刊行し注目される。1941年,ミラノのG.ベルディ音楽学院の文学教授に招聘され,同市に定住。生地の島シチリアへの憧憬を澄明な言葉で歌いあげた詩編の集成《そしてすぐに日は暮れる》(1942)によって,エルメティズモを代表する詩人とみなされるにいたった。ファシズム後期の圧政下に《ギリシア抒情詩》(1940)の刊行をはじめ,ホメロス,カトゥルス,ギリシア悲劇の翻訳に励み,43年9月以降の熾烈なレジスタンスの時期に,惨苦に満ちた状況そのものを直視した詩編を綴り,解放後,《来る日も来る日も》(1947)以下一連の詩集として発表,戦前の抒情詩から叙事詩へ,独白(モノローグ)から対話(ダイアローグ)へと開かれた詩を目ざし,詩人の社会的責務を説いた。代表的な詩論として《詩人と政治家》(1960),シェークスピア,ネルーダ等の翻訳,また《劇評集》(1961)も残した。59年,ノーベル文学賞を受けた。
執筆者:古賀 弘人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報