クラインの壺(読み)くらいんのつぼ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラインの壺」の意味・わかりやすい解説

クラインの壺
くらいんのつぼ

円柱上下境界の二つの円周図A矢印で示したような向きをつけておく。この向きが相反するように二つの円周をあわせると、輪環面トーラス)ができる。ここで、この向きが一致するようにあわせると、円柱は自身を横切ることになり、図Bのような円周で自己交差する図形ができる。しかし、この図形を四次元空間中に入れて図形の一部分を四次元方向へずらすと、この自己交差をなくすことができ、この閉曲面が、フェリックス・クラインによって発見されたクラインの壺である。クラインの壺は図Cのように2等分すると、それぞれがメビウスの帯となるので、二つのメビウスの帯を境界に沿って貼(は)り合わせてもできる。クラインの壺は不可符号の閉曲面の重要な例であり、輪環面とは位相的性質が本質的に異なる。

野口 廣]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラインの壺」の意味・わかりやすい解説

クラインの壺
クラインのつぼ
Klein bottle

クラインの瓶ともいう。メビウスの帯と同じように,表と裏の区別がつかない面である (→メビウスの曲面 ) 。このような面を不可符号な曲面とか,向きのつけられない曲面とかいう。クラインの壺をつくるには,まず長方形 ABCD (薄いゴム板のようなものを想像する) の,AとB,CとDを重ねて,AD,BCを貼合せて円管をつくる。次にこうしてできた円管を1回ねじって,AとC,BとDを重ねて,AB,CDを貼りつければよい。これは3次元ユークリッド空間内では実現できないが,普通は図のように,円管の一方の口を曲面にもぐりこませ,内側からもう一方の口に接続させてできる面として示される。

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