メビウス(読み)めびうす(英語表記)August Ferdinand Möbius

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メビウス」の意味・わかりやすい解説

メビウス
めびうす
August Ferdinand Möbius
(1790―1868)

ドイツの数学者、天文学者プロシアのシュルプフォルタに生まれる。1813~1814年ゲッティンゲン大学のガウスの下で天文学の実習を受け、のちに彼の推薦ライプツィヒのプライセンブルク天文台長、同大学教授となった。理論天文学の面では、『惑星による星食の計算について』De computandis occultationibus fixarum per planetas(1815)で名を得た。数学者としては晩成で、彼の有名な主著重心算法』Der barycentrische Calcul(1827)も、1843年に至って偶然師のガウスの目に留まり激賞されるような状態で、目だつことのない人柄であった。『重心算法』では重心の考えによって点の「斉次座標」を導入し、一つの平面(一般に空間)から他の平面へのアフィン変換、射影変換を考えた。その基礎は「メビウスの網」である。のちには円を円に移す変換なども考えた。裏表のない「メビウスの帯」はよく知られているが、これは彼がかなり高齢になった1858年ごろの発見であった。

[寺阪英孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メビウス」の意味・わかりやすい解説

メビウス
Möbius, August Ferdinand

[生]1790.11.17. シュールポルタ
[没]1868.9.26. ライプチヒ
ドイツの数学者,天文学者。「メビウスの曲面」と解析幾何学 (メビウス幾何学。→共形幾何学 ) の研究で知られる。 1815年,ライプチヒ大学の天文学教授となり,のちに大学の天文台台長となる。天文学者としての評判は『惑星の星食の計算について』 (1815) によって確立された。彼の数学の論文は大部分『クレーレ・ジャーナル』に発表されたもので,その多くは幾何学に属している。彼は『重心計算』 (1827) において,解析幾何学に斉次座標を導入し,射影変換を扱い,論文の多くは,この方法を用いたものである。「メビウスの曲面」は,彼がパリの科学アカデミーに提出した覚え書のなかで研究されている。この覚え書は彼の死後発見された。そのほかに静力学の教科書も書いている (1837) 。全集 (4巻) が 1885~87年に出版された。

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