改訂新版 世界大百科事典 「クラブント」の意味・わかりやすい解説
クラブント
Klabund
生没年:1890-1928
ドイツの詩人,劇作家,物語作家。本名ヘンシュケAlfred Henschke。G.ベンの級友。20世紀ドイツのボヘミアン(放浪)文士のなかで,赤裸々な人間性を鋭く暴くとともに,純粋な抒情性を表現した希有の詩才の一人。フランスの詩人F.ビヨンの志向の現代における体現者。彼自身ビヨンを愛し,その後裔を自認した。各地を遍歴し,中国の戯曲《灰蘭記》を脚色した《白墨の輪》(1924)や日本の詩の翻案によって知られていたが,それは単なるエキゾティシズムではなく,社会の底辺に住む人間のペーソスを歌ったものだった。肺結核で常に死と隣り合せに生きていた彼は,〈この世に奇跡を求めた〉。売春婦を歌う視角の大胆さに現れている新感覚は,ワイマール時代の都市文化生活感情を体現している。そして彼の仕事と生き方は当時のボヘミアン文士の典型であった。38歳でスイスのダボスで死去した。2度目の妻は女優ネーアー。
執筆者:平井 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報