フランスのパンケーキの一種。小麦粉に卵,牛乳などを混ぜたなめらかなゆるい生地をごく薄く焼いたもの。そば粉を混ぜたり,焼き上がりをしっとりとさせ,風味をよくするために溶かしバターや砂糖を加えたりする。厚手で縁の浅いよくなれた専用のフライパンを使うのが上手につくるこつで,これに薄く油を塗り,生地を均一に薄く流し入れる。生地の周囲に少し焼き色がついたら裏返して焼き上げる。表面がちぢみ状になるところからクレープ(ちりめんの意)の名があるという。フランスでは,古くから焼きたてに粉砂糖をふりかけたり,ジャムやクリームを包んでおやつとされている。2月2日の〈聖母お潔(きよ)めの祝日〉や謝肉祭の最後の日にクレープを焼いて祝う習慣も守られている。ブルターニュ地方のように,コムギの栽培ができなかったところでは,そば粉でつくってパンがわりの主食とされたこともある。街には焼きたてのクレープを立食いする人々でにぎわう屋台店やクレープ料理専門店がみられる。軽食用にハムやエビのクリーム煮を包んだり,グラタンにしたり,アイスクリームを包んでデザートにするなど,利用範囲は広い。レストランなどで出される〈クレープシュゼット〉は,オレンジソースで軽く煮込んだクレープに,コニャックあるいはオレンジのリキュール(コアントロー,グランマルニエなど)をふりかけ,最後に客の目の前で火をつけてサービスする香り高いデザートである。
執筆者:辻 静雄
たて糸またはよこ糸,あるいは両者に強撚糸を用いた平織物(ときにはサテンなど)を,熱セッケン水などで処理し強撚糸を収縮させて〈しぼ〉を出したもの。この処理をしぼ立てまたはクレープ加工という。日本のちりめんはこのクレープの一種で,16世紀に明より伝わったものである。クレープにはいろいろ種類が多い。クレープデシン(デシンと俗称)はその代表的なもので,フランスから輸入されたのでフランスちりめんともいう。絹のほか,ナイロン,銅アンモニアレーヨン(商品名ベンベルグ)などを用いている。よこ糸に強撚糸を使った綿のクレープは,肌触りがさらりとし,夏用の肌着などに向く。よこ糸に強撚糸を使った梳毛(そもう)織物で黒に染めたクレープはcrapeと綴ることが多く,欧米では聖職者の衣服や,喪服,喪章として使われていた。
→クレープデシン →縮緬(ちりめん)
執筆者:坂本 宗仙
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
強撚糸(きょうねんし)を使った縮緬(ちりめん)や、縮(ちぢみ)などの総称。とくに洋装生地をさしていることが多い。経糸(たていと)または緯糸(よこいと)、あるいはその両方に強撚糸を使い、製織したのち、糊(のり)抜き、精練などをして織り面を収縮させ、しぼをつくるが、撚(よ)りの方向、撚り回数、撚り糸の使い方などによって、変化のある織物ができる。
近世になってから、撚糸機の発達から急激に用いられ、主体である絹以外に、綿、毛、麻にも応用され、多くの種類を生んだ。とくに絹のクレープは、柔らかな肌ざわりと軽やかさのため、寝巻、肌着、ブラウスなどの生地に使われる。
[角山幸洋]
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…フランスのパンケーキの一種。小麦粉に卵,牛乳などを混ぜたなめらかなゆるい生地をごく薄く焼いたもの。そば粉を混ぜたり,焼き上がりをしっとりとさせ,風味をよくするために溶かしバターや砂糖を加えたりする。厚手で縁の浅いよくなれた専用のフライパンを使うのが上手につくるこつで,これに薄く油を塗り,生地を均一に薄く流し入れる。生地の周囲に少し焼き色がついたら裏返して焼き上げる。表面がちぢみ状になるところからクレープ(ちりめんの意)の名があるという。…
…縮織の略。洋服地のクレープcrapeにあたる。生地全体にしぼ(皺),しじら(縬)のある織物の総称。…
※「クレープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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