有機化学では,「カップリング」を広義の結合形成の意味で用いる.有機合成化学では,グリニャール試薬などの有機金属化合物(炭素求核体)とハロゲン化アリル,エーテル,カルボン酸エステルとの反応により選択的にC-C結合を形成する反応などをカップリング反応と称している.アルキルハライドとナトリウムにより対称な結合を形成する古典的なウルツ反応は,よく知られているカップリング反応の一つであり,ホモカップリングともよばれる.一方,非対称な結合を形成する場合には,クロスカップリング反応またはヘテロカップリングと称されている.上記のグリニャール試薬を用いる反応などは化学量論的に進行するが,微量の金属を触媒とする効率のよいクロスカップリング反応が見いだされている.なかでも,辻 二郎の研究に端を発するパラジウム触媒は,ほかの金属の追随を許さないすぐれた有用性を示す.クロスカップリング反応としては,辻-トロスト反応,溝呂木(みぞろき)-ヘック反応,鈴木カップリングなどが有名である.多彩なクロスカップリングのなかからとくに有用な医薬・農薬・液晶などの製造への利用に貢献した業績に対して,2010年ノーベル化学賞がHeck, Richard F.(ヘック),根岸英一,鈴木 章の3名に授与されている.辻-トロスト反応は,辻 二郎らにより初めて報告され,Barry M. Trostらによって詳細な検討が加えられた.酢酸アリルエステル(ハロゲン化アリル,アリルフェニルエーテル)などから誘導されるπ-アリルパラジウム錯体による,活性メチレン(エノラート,アミン,フェノール)などの求核種のアリル化反応である.溝呂木-ヘック反応は,溝呂木勉およびHeckにより見いだされた反応で,電子不足のアルケンの水素を,パラジウム錯体を用いて塩基存在下,ハロゲン化アリールまたはアルケニルを用いて置換する反応である.鈴木カップリング(鈴木 章と宮浦憲夫により報告され,鈴木-宮浦反応とも称される)は,ハロゲン化アリールまたはアリールトリフラートとアリールホウ酸またはアリール化有機ホウ素をパラジウム錯体の存在のもとで縮合して非対称なビアリールを調製する反応として報告されたが,芳香族のみならずアルケンやアルカンを基質とするカップリングも開発されている.また,根岸カップリングは,有機亜鉛化合物と有機ハロゲン化物をパラジウムまたはニッケル触媒の存在下で結合して,C-C結合を形成する反応で,根岸英一が初めて報告した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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