日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロプシュトック」の意味・わかりやすい解説
クロプシュトック
くろぷしゅとっく
Friedrich Gottlieb Klopstock
(1724―1803)
ドイツの詩人。プロイセンのクベドリンブルクに生まれ、イエナとライプツィヒの両大学で神学を学んだ。文学雑誌『ブレーメン寄稿』に参加して、1748年宗教的な大叙事詩『救世主(メシーアス)』の第3歌までを発表し、世の熱狂的な賞賛を博した。それは当時のドイツ文学において支配的だった啓蒙(けいもう)思想やフランス風の詩法に対する、音楽的、感傷主義的、敬虔(けいけん)主義的な感情の高揚であり、革新であった。彼は古代ギリシアの詩形をドイツ語の抑揚のなかへ移し変え、語法を大胆に改革して数々のオーデ(頌歌(しょうか))をつくり、さらに進んで『春の祝い』(1759)を頂点とする自由律の頌歌の創造に成功し、ドイツ近代文学における最初の国民詩人の地位を占めた。その文学的成功と安楽な生活は、その後の彼からかえって成長の意欲を奪い、『救世主』の続稿も価値高いものとはいえない。しかし古代との遭遇(そうぐう)や、感受力の強烈さという点だけでも、ゲーテ、ミラーの詩的出発は、クロプシュトックなしには考えられないし、とくにヘルダーリンが詩法的、感情的に彼に負うところは大きかった。彼はこうしてドイツ近代詩の祖とともに、その影響は遠くリルケにまで及んでいる。
[生野幸吉]