日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラナドス」の意味・わかりやすい解説
グラナドス
ぐらなどす
Enrique Granados y Campiña
(1867―1916)
スペインの作曲家、ピアノ奏者。アルベニスとともに近代スペイン民族楽派を代表する。レリダに生まれる。バルセロナでプホールとペドレルにピアノを学んだのち、パリでドゥ・ベリオに師事した。1889年バルセロナに戻り、グリークのピアノ協奏曲と自作の『スペイン舞曲』でデビュー、その後もピアニストとしてサン・サーンスやカザルスと共演するなど演奏活動を活発に行う一方、1901年には「アカデミア・グラナドス」を創立、後進の育成に努めた。
作曲家および演奏家としての名声は、1914年に自作を集めてパリのサル・プレイエルで開いた演奏会で頂点に達する。このときの主要曲目は、彼の代表作であるピアノ組曲『ゴイェスカス』2巻6曲(1911)であった。ゴヤの絵から霊感を得たこの傑作は、16年にオペラとして再構成され、第一次世界大戦のためニューヨークで初演が行われ大成功を収めたが、その帰途、乗り合わせたイギリス汽船サセックス号がドイツ軍の潜水艦によってイギリス海峡で撃沈され、同年3月24日妻とともにこの世を去った。彼の作品では、スペインの風俗や男女の物語が独特の香気をもって描かれている。その他の代表作はピアノ曲『スペイン舞曲集』2巻(1900)、オペラ『マリア・デル・カルメン』(1898)、歌曲集『トナディーリャス(スペインの粋(いき)な小唄(こうた)集)』(1912)、『愛の歌曲集』(1914)など。
[関根敏子]