日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラネ」の意味・わかりやすい解説
グラネ
ぐらね
Marcel Granet
(1884―1940)
フランスの中国学者。デュルケーム派の社会学者にして、その社会学を古代中国社会研究に応用した。中国学をシャバンヌに学び、中国に留学したのち、東洋語学校、ついでパリ大学の教授として斬新(ざんしん)な体系を展開し、若手研究者の間に人気があった。『支那(しな)古代の祭礼と歌謡』『支那人の宗教』『古代シナの舞踊と伝説』『シナ文明』『シナ思想』などの著書により、古代中国の農村社会における集団婚の存在、母系社会より父系社会への変革などを説き、いずれも独創的な見解である。しかし、その研究はもっぱら翻訳に頼るため、漢文の原典に対する吟味が不十分であり、理論のみが独走するという批判が一方にある。
[宮崎市定]
『内田智雄訳『支那古代の祭礼と歌謡』(1938・弘文堂)』▽『津田逸夫訳『支那人の宗教』(1943・河出書房)』