グリニャール(読み)ぐりにゃーる(英語表記)François Auguste Victor Grignard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリニャール」の意味・わかりやすい解説

グリニャール
ぐりにゃーる
François Auguste Victor Grignard
(1871―1935)

フランスの化学者。シェルブールの兵器工場勤めの労働者の子として生まれる。リヨン大学に入り、初め数学を好み、化学には親しまなかった。1900年化学者のバルビエPhillipe Antoine Barbier(1848―1922)に巡り会ったことが化学者としての彼の将来を決めることになった。有機合成亜鉛のかわりにマグネシウム金属を用いたらという師の指示が功を奏し、広範囲に有用なグリニャール試薬(臭化あるいはヨウ化アルキルのエーテル溶液にマグネシウム粉を溶かしてつくった)の発見となった。ブザンソンナンシーなど地方大学の講師や教授を務め、1912年ノーベル化学賞を触媒研究のP・サバチエとともに受けた。1914年第一次世界大戦勃発(ぼっぱつ)とともに軍務に服し、毒ガスの研究に従事したが、戦後は有機化学研究に戻り、1919年リヨン大学の教授、最晩年は『有機化学大系』Traité de chimie organiqueを編集し、自ら有機化学の歴史を書いた。

[都築洋次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリニャール」の意味・わかりやすい解説

グリニャール
Grignard, (François Auguste) Victor

[生]1871.5.6. シェルブール
[没]1935.12.13. リヨン
フランスの有機化学者。リヨン大学に入り,初め数学を志したが,L.ブーボーの影響で有機化学を専攻。ナンシー大学教授 (1910) ,リヨン大学教授 (19) 。 P.バルビエの示唆でアルキル亜鉛化合物の研究を始め,1900年に,グリニャール試薬を発見した。学位論文のなかで,グリニャール試薬がさまざまな試薬と反応して (グリニャール反応) ,アルコール,酸,炭化水素の広範な多種の有機化合物をつくることを示した。この新しい合成方法は有機合成化学に重要な新分野を開いた。 12年に P.サバチエとともにノーベル化学賞を受賞した。

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