テトラヒドロフラン

化学辞典 第2版 「テトラヒドロフラン」の解説

テトラヒドロフラン
テトラヒドロフラン
tetrahydrofuran

tetramethylene oxide.C4H8O(72.11).略称THF.オキソランともいう.フランまたは無水マレイン酸の接触還元により得られる.工業的には,テトラヒドロフルフリルアルコ-ルの触媒的水素分解によって合成される.エーテルのような臭気をもつ無色液体融点-108.5 ℃,沸点65~66 ℃.0.888.1.405.引火点-17.2 ℃.双極子モーメント1.70 D.特異な香りをもち,多くの有機溶媒および水によく溶け,4.3% の水と共沸混合物をつくる.空気と長く接触すると爆発性の過酸化物(沸点62 ℃(26 Pa))を生成する.これを防ぐため,市販品には少量のp-クレゾールやヒドロキノンを添加する.精製法としては,水素化アルミニウムリチウムを加えて還流したのち蒸留するが,蒸発乾固すると爆発の危険性があるので注意を要する.硝酸酸化により,ほぼ定量的にコハク酸が得られ,アンモニアとともに300~320 ℃ のアルミナ上を通すとピロリジンが得られる.塩化亜鉛の存在下,酸もしくは酸クロリドと反応させると開環し,1,4-グリコール,1,4-ジハライド,1,4-ハロゲン化アルコールを与える.カチオン重合性がある.合成樹脂溶剤,有機合成反応溶媒として広く用いられる.また,ナイロンポリエーテル,γ-ブチロラクトンの合成原料ともなる.[CAS 109-99-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テトラヒドロフラン」の意味・わかりやすい解説

テトラヒドロフラン
てとらひどろふらん
tetrahydrofuran

環内に酸素原子1個をもつ飽和5員環複素環式化合物の一つ。フランに4原子の水素をつけた構造をもつので、フランfuranの名前の頭にテトラtetra(4を表す数詞)+ヒドロhydro(水素)の接頭語をつけて命名する。エーテルに似たにおいをもつ無色の液体で、引火性が大きい。水およびエタノールエチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒とよく混じり合う。溶解力の強い溶媒で、合成樹脂の溶剤、とくにポリ塩化ビニル樹脂の溶剤として用いられる。

[廣田 穰]


テトラヒドロフラン(データノート)
てとらひどろふらんでーたのーと

テトラヒドロフラン

 分子式  C4H8O
 分子量  72.1
 融点   -108.5℃
 沸点   66℃
 比重   0.888(測定温度20℃)
 屈折率  (n)1.4050
 引火点  -17.2℃
 溶解度  ∞(水と任意の割合で混合)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テトラヒドロフラン」の意味・わかりやすい解説

テトラヒドロフラン
tetrahydrofuran; THF

ポリマーの良好な溶媒。特臭をもつ。沸点 64~65℃。水と共沸混合物をつくる。石油化学工業における抽出剤として,また溶剤として工業的に広く用いられるとともに,有機合成原料としても重要。1,4-ブタンジオールの脱水か,フランの還元によってつくられる。

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