日本大百科全書(ニッポニカ) 「グルーズ」の意味・わかりやすい解説
グルーズ
ぐるーず
Jean-Baptiste Greuze
(1725―1805)
フランスの画家。トゥールニュに生まれ、リヨンで学んだのち、1750年ころパリに出る。55年サロン出品の『家族に聖書を読みきかせる父親』(サンクト・ペテルブルグ、エルミタージュ美術館)で世評を高め、69年アカデミー入り。ロココ風の甘美さと、オランダ絵画の精密な描写、それに若干の教訓性を帯びた主題の結合は、当時「道徳絵画」を求めたディドロたちの主張に迎えられた。『村の結婚』『こわれた瓶』(ともにルーブル美術館)などが代表作だが、ディドロたちの称揚にもかかわらず、本質的にはそれらはロココ的感傷主義の一側面でしかない。むしろ、古典主義的な歴史画、あるいはレンブラントの影響を思わせる肖像画の分野に彼の力量は発揮されている。
[中山公男]